IVEとデヴィッド・ゲッタのコラボ曲『Supernova Love』(2024年11月8日リリース)が炎上しています。
『Supernova Love』は坂本龍一さんの楽曲『戦場のメリー・クリスマス』をサンプリングしているのですが、これが炎上の原因となっています。
それではなぜ、炎上しているのでしょう。
皆さんも、IVEの曲と、元になる坂本龍一さんの曲を聴き比べながら、ご一緒に見ていきましょう。
IVEの新曲『Supernova Love』について
先ずは、話題のIVEの新曲『Supernova Love』。
こちらから聴いてみてください。
IVEとコラボしたのは、フランス出身の大物DJ、アーティストで音楽プロデューサーのデヴィッド・ゲッタ(Pierre David Guetta)です。
『Supernova Love』は、坂本龍一さんの『戦場のメリー・クリスマス』をサンプリングしています。
【サンプリングとは?】
過去の楽曲の一部を再構築して、新しい楽曲を制作する方法です。
あらゆるジャンルの音楽で用いられています。
元歌は『戦場のメリー・クリスマス(Merry Christmas Mr. Lawrence) 』
次に、今回のコラボ曲の元歌をご紹介します。
元の楽曲は『戦場のメリー・クリスマス(Merry Christmas Mr. Lawrence) 』。
映画『戦場のメリークリスマス』(1983年)のサウンドトラックの中の、メインテーマ曲です。
このサウンドトラックアルバムは、英国アカデミー賞で作曲賞を受賞しています。
※こちらは『戦場のメリークリスマス 4K修復版』(2023年上映)の予告動画です↓
メインテーマが流れていますので、聴いてみてください。
映画『戦場のメリークリスマス』のキャスト陣もスゴかったんですよね!
【映画『戦場のメリークリスマス』のキャスト】(敬称略)
デイビッド・ボウイ(ジャック・セリアズ陸軍少佐)
坂本龍一(ヨノイ大尉)
ビートたけし(ハラ・ゲンゴ軍曹)
トム・コンティ(ジョン・ロレンス陸軍中佐)
ジャック・トンプソン(ヒックスリー俘虜長)
内田裕也(拘禁所長)
三上寛(イトウ憲兵中尉)
ジョニー大倉(カネモト朝鮮人軍属)
アリステア・ブラウニング(カール・デ・ヨンオランダ軍兵士)
室田日出男(ゴンドウ大尉)
内藤剛志(イワタ法務中尉)
車邦秀(俘虜収容所勤務の兵)
三上博史 (俘虜収容所勤務の兵)
他
『ウルトラマン』シリーズなどのアクション指導・殺陣師で知られる車邦秀さん、俳優の三上博史さんが「俘虜収容所勤務の兵」として出演していたりも!
戦時中という過酷な設定の中、役者さんたちの体当たりの演技が圧巻です。
撮影当時、坂本龍一さんは30歳でした。
今までも、『戦メリ』のサンプリング・カバー曲はあった?
坂本龍一さんの『戦場のメリークリスマス』は、今までも多くの人がサンプリング、カバーしています。
なぜ『Supernova Love』だけが不評だったのでしょうか。
過去のサンプリング曲も、ぜひ聴いてみてください。
宇多田ヒカルさん『Merry Christmas Mr. Lawrence – FYI』
宇多田ヒカルさんが『戦場のメリークリスマス』のサンプリング曲を出していることは有名ですが、
こちらも、愛の歌です。
歌詞の中に「Om Mani Padme Hum♪」というフレーズが出てきますが、これはチベットのマントラ(祈り)のひとつです。
このマントラを唱えることで、心身が浄化され、自分自身と周囲の人に平穏、癒しがもたらされるといわれています。
坂本龍一さんの楽曲に話を戻しますが、楽曲『戦場のメリークリスマス』は、世界から「東洋と西洋の融合」といわれ、評価されていたんですね。
しかし、坂本さんはこのように話しています。
「東でも西でもない、西洋人も東洋人も同様に感じる事ができる、あるオリエンタルな空想の場所で、古代であり、現代であり、つまり時間的にもどこでもありうる場所」
(引用元:「坂本龍一・全仕事」)
宇多田ヒカルさんの、マントラを取り入れた『Merry Christmas Mr. Lawrence – FYI』も、「東西関係なく 人が感じることのできる拠り所」のように感じます。
これは、教授の『戦場のメリークリスマス』にも繋がっているように感じますね。
『Merry Christmas Mr. Lawrence – FYI』の歌詞全文はこちら
つじあやのさん『戦場のメリークリスマス』
こちらは、つじあやのさんが作詞された『戦場のメリークリスマス』のカバー曲です。
つじあやのさんは2008年、テレビ東京系「ミューズの晩餐」の中で『戦場のメリークリスマス』を「いま、最も大切にしている曲」と話しています。(参考:音楽ナタリー 2008.10.23 )
サラ・ブライトマン『Forbidden Colours』
『Forbidden Colors』、元々は、坂本龍一さんの長年の友人でもある デヴィッド・シルヴィアンの歌です。
作詞はシルヴィアンで、『戦場のメリークリスマス』のサントラに収録されています。
「Forbidden Colours」は日本語で「禁じられた色彩」。歌詞は、映画とリンクしています。
この『Forbidden Colours』を、イギリス人の歌手「サラ・ブライトマン」がカバーしています。
RYUZO feat.ANARCHY & 名取香り『戦場のメリークリスマス -ONE DAY』
『戦場のメリークリスマス -ONE DAY』はラッパー・音楽プロデューサーであるRyuzoが、2005年にリリースしたアルバム『RELOADED』に収録されています。
反戦と平和を唄うリリックは、今も人々の心に響いています。
当時、権利関係が難しかったけれど、坂本龍一さんご本人がこの歌を聴いてサンプリングをOKされた、といわれています。
Ryuzoさんご本人も、2022年のクリスマスに、
太古の昔に出した曲
メリクリ
(引用元:RyuzoさんX 2022.12.25 より)
と、メッセージを寄せ、この曲を紹介しています。
幾年経っても、愛されている曲です。
ガザを想い、このYouTubeのコメント欄には「今こそこの曲を皆に聴いてほしい」という声が寄せられていました(2023年)。
「辛くなった時に、聴いている」という声も。
炎上の理由は何だったのか?
他にもまだ『戦場のメリークリスマス』サンプリング・カバー曲はありますが…、一部ご紹介致しました。
聴いてみて、いかがでしたでしょうか。
それでは、IVEの楽曲が「炎上」してしまったのは、なぜでしょうか?
多く見られたのが「歌詞がうすっぺらく感じる」「原曲に対するリスペクトがない」という意見です。
元の曲は、ご紹介した通り、映画『戦場のメリークリスマス』のメインテーマ曲です。
この映画は、戦時中の俘虜収容所の人間たちを描き、戦争について考えさせる、大変重いテーマを扱っています。
一方、IVEの『Supernova Love』は、ラブソングです。
このギャップが、多くの人の違和感となったようです。
悲しさ、切なさ、美しさ…映画ともリンクされて、それらを深く深く記憶しているので、
ラブソングに上書きされてしまったように感じ、悲しくなった方が大勢いました。
(日本のかただけではなく、それは国籍問わず、いらっしゃいました。)
でも、今までも 多くの人がサンプリングしてきたし、その中には「ラブソング」もあったのに、今回だけ、なぜ炎上?
そうですね。ラブソングもありましたよね。
そこで考えられることは、次の2つではないかと思います。
『Supernova Love』に関しては、
- メインのメロディー部分が、元曲メロディーとほぼ同じであること
- そのメインメロディーが、少し速めで ポップな曲調になっていること
が原因として、あるのだと思われます。
例えば、つじあやのさんのカバー曲では、Aメロの部分は元の曲と全く同じというわけではありません。
かつ、ゆるやかな曲調の歌となっています。
メインのメロディーは取り入れているけれど、アレンジしている。(「ほぼ同じ」とは感じない。)
曲調はゆるやかだから違和感なく聴ける。ゆえに、自然に受け入れることができるのでは、と、分析します。
『Supernova Love』は、最初のメインのメロディーが、元の曲と重なる部分がやや多いので、余計にポップな曲調と「いま風の」ラブソングに、「今もなお 耳に残っている人々の記憶」が、違和感を感じているのだと思います。
これは、逆に言えば『戦場のメリークリスマス』映画と楽曲が素晴らしかったということ。
そして人々の記憶に深く残ったため、といえるでしょう。
映画『戦場のメリークリスマス』も、戦時中の過酷な環境の中で、セリアズ陸軍少佐(デビッドボウイ)とヨノイ大尉(坂本龍一さん)の男同士の愛が描かれていた、との見方があります。
「恋愛」というテーマにおいて、『Supernova Love』とも共通項があるのではないか、リスペクトされているではないか、という考察もあります。
『Supernova Love』が、他のどのサンプリング曲よりも「原曲に忠実に、恋愛を歌い上げている」という意見もありますね。
音楽の感じ方は、人それぞれでいい
作品に対しての感想は、人それぞれですので、「受け入れられない」と思うのもまた、自然なことだと思います。
無理に受け入れなくても大丈夫です。
そういった、自分の「受け入れられない感情」も、大事にしてあげてください。
逆に、元となっている坂本龍一さんの曲を全く知らないで・あるいは知っていたうえで、『Supernova Love』を「別の物語」として楽しむ人もいらっしゃいました。素敵なラブソングだと感じる人も。
もちろん、それぞれで良くて ♡
それぞれの、自分の感じるままの気持ちを、大事にしてくださいね!
そして、作り手のデヴィッド・ゲッタさんは、決して坂本龍一さんの楽曲に対してリスペクトが無い、というわけではないと思っています。
今回のコラボは、KDM Recordsが進める「The Collab X」プロジェクトの一環で、今後も、K-POPと様々なコラボが予定されています。
このプロジェクトには「東洋と西洋の音楽の最高を一つにまとめる音楽的な架け橋」そういった役割があるのだそうです。(参考:Newsen 2024.11.4 )
教授のいうところの「東洋も西洋も関係なく、同時に感じることができるところ」という楽曲制作への想いに、繋がっているような気がしますね。
K-POPは、韓国と日本の架け橋になってくれた文化でもあります。
『Supernova Love』に対しての感想はそれぞれ違いますが、IVEは応援していきたい!と、そこのファンの気持ちは一致しているようです ♡
コメント