ユン・ソクヨル大統領の弾劾訴追案が可決されました。
弾劾には、それ相応の理由があるにもかかわらず、日本で「ユン・ソクヨル大統領は“親日”だったから、“かわいそう”」「次の大統領になったら“日韓関係”が悪化するのではないか」といった一部の声を目にするようになりました。
一部ではありますが、メディアまでもが、そういった報道をしています。
今回だけではなく、これまでも、政治に限らず「親日(しんにち)」あるいは「反日(はんにち)」という言葉が、使われてきました。
でも、この「親日」とはいったい何でしょう?
実はこの「親日」というのは、「親しみ」という意味ではないのです。
ここで、解かりやすく解説していきたいと思います!
「親日」ってどういう意味?
「親日」というと、その意味するところについて「日本に好意的」という印象がある方も、まだ日本には多いと思います。
一見、「親」と「日」という漢字が組み合わさっているので、そうイメージするのも無理はないと思います。
「国家」が使う「親日」の言葉の意味
しかし、「親日」という言葉には、歴史的な背景があります。
「親日」は、むしろ「親しみ」とはほど遠い概念といえます。
歴史的な背景
それでは、歴史的な背景について解説します。
韓国で使われている「親日」「親日派」という言葉は、日本の植民地支配時代にできたものです。
「親日派」は、日本の植民地支配に協力した韓国の人々を指します。
「親日派」は韓国語で「친일파」(チニルパ)と書きます。
韓国における「親日」の「日」は、「日本帝国主義」、「日帝の朝鮮半島支配」のことです。
「親日」の「親」は、(親しみ、という意味合いではなく)「日本帝国主義への協力者」のこと。
しかし、日本からの独立回復後も、そういった「親日派」の残党が、再び権力に復帰することを繰り返し、現代に至ります。
軍事独裁者の1人であったパク・チョンヒ(朴正煕)元大統領は、植民地時代、日本帝国の軍に仕えていました。
(日本が行った「創氏改名」によって「高木正雄」将校として。)
そして、パク・チョンヒの娘であるパク・クネ(朴槿恵)も、後に大統領になっています。
しかし、韓国に民主化時代が訪れたのち、「親日派」究明運動も進んでいきます。
ですので、民主主義のための「親日派の究明」は、「反日」といった類のものではないんですね。
「親日」問題の解決が「過去の克服」であり、韓国はその歴史に向き合っています。
しかし、2007年5月のこと、町村信孝前外相が、その親日派究明運動について、「ノ・ムヒョン(盧武鉉)政権が支持率を上げるためのパフォーマンス、日本たたき」と発言したことがあります
(参考:imidas 2007.8.31 )。
これは、町村元外相の、大きな、理解不足です。
町村さんに限らず、日本の一部政治家や、一部のメディアも、親日派究明運動について、まるで「反日」かのようにとらえたり、発言することが見受けられますが、きちんと学んで、運動の本質を理解する必要があります。
そして日本の「国家(為政者)」の言う「親日」の意味は、「日本の言うことを都合よく聞いてくれる国」という意味合いです。
これも、植民地時代の歴史的背景が根深い考え方です。
日本も、真摯に歴史に向き合い、こういった考え方をやめていくことが大事ですね。
歴史的背景を知ること無しに「親日」「反日」というカテゴライズに落とし込む、ということが一部のメディアなどで恣意的に行われてしまっていますが…それは、決してやってはならないことですね。
いづれも「親日」とは「国家」の間で使われてきた、歪んだ概念であることが分かりました。
そして、韓国と日本の市民同士は、友人として同僚として、親しく、変わらぬお付き合いをしています。
韓国で、次の大統領が誰に決まっても、
一部の政治家やメディアがうがった見方をしても、
市民の交流は、今まで通り、変わりません。
この「親日」「反日」のような歪んだ概念は、改善していくことができます!
「日韓関係が悪化する」って本当?
一部の日本の人やメディアが、ユン大統領の時に「日韓関係」が「良くなった」、次の大統領では「悪化するのではないか」と言っています。
しかし、この認識は、ずれています。
良い関係は「作っていくもの」ですよね。
林芳正官房長官は16日の記者会見で、こう話しています。
「現下の戦略環境のもと日韓関係の重要性は変わらない。韓国側とは引き続き緊密に意思疎通をしていく」
(引用元:日本経済新聞2024.12.16 )
ユン大統領は、「非常戒厳」を発令するという、きわめて重大な事をおこしてしまいました。
非常戒厳とは、インターネットやメディアの規制、国民の集会やデモ活動の禁止、市民の制圧のための軍の出動がなされ、韓国の人々の基本的人権が大きく制限されることです。
こういった、民主主義をおびやかす行為はやってはならないことで「“政治信条”に関係なく」国会議員も市民も、国会に駆けつけ、6時間で解除議案を可決させました。
与党「国民の力」からも、少なくとも12人の議員が、ユン大統領の弾劾訴追案に賛成票を投じたと報じられています。
このように、国民の人権を奪おうとした行動は、韓国だけではなく他の国々にも、良い影響はもたらしません。
ただ
2023年、ユン大統領は、岸田首相(当時)と「韓国人原爆犠牲者慰霊碑」に参拝しました。
在日韓国人の被爆者とも面会し、政府として支援が充分でなかったことを陳謝しています。
面会し、お詫びしたのはユン大統領が初めてでした。
このことは、評価できると思います。
冷静に、評価することは大切です。
だからこそ、「非常戒厳発令」は、あまりにも重大で、絶対にやってはならないことでした。
残念です。
ユン大統領の日本外交とは?日韓関係が「良くなった」のか?
日本では「ユン大統領になり、“日韓関係”が良くなった」と報道するメディアもあります。
では、「日韓関係」とは、何でしょう?
ユン大統領の対日外交は、戦後補償問題において、日本の国家に対する要求を後退させる形で進められています。
つまりは、韓国の犠牲者の方々…韓国の市民を切り捨てています。
これは、真の意味で「日韓関係の改善」にはなりません。
当然のことながら、ユン大統領のアプローチは国内外での批判を招きました。
「国家」レベルでは、これから、真の意味での「日韓関係」を築いていける機会にしていけば良いと思います。
「市民」レベルでは、韓国と日本の市民の交流、友情は、変わりません。
韓国の大統領が変わろうと、日本の首相が「歴史歪曲主義」の人になろうと、
市民レベルでの 共同の歴史研究、歴史認識の学び合い、対話、それらは、何十年も前から(ヨン様ブームよりも前から)行われてきています。
今は、K-POP、韓流ドラマを入り口として、植民地時代の歴史を学ぶ日本のファンも、より増えました。
私たち市民はこれからも、「国家」ではない、市民レベルで繋がって、
一緒に学んだり、
「いかなる国々の人へも(もちろん日本の人への補償も含みます)、人の尊厳回復、補償を」と、「国家」に言っていったりすることが大切ですね。
歪んだ概念を改善していくアプローチは何がある?
「親日」「反日」といった歪んだ概念はやめるべきですが、実際にあった負の歴史として 学ぶべきことでもあるでしょう。
改善していくためには、過去の過ちの歴史をしっかり学んだうえで、市民レベルでの学習、異なる国や地域からの視点で歴史認識を深めることが重要です。(今の日本の歴史教育では、不十分です。)
韓国では、ベトナムへの加害教育も、光州事件も、必ず教育課程で学びます。
日本もしっかり学べる環境を整え、韓国をはじめアジアの国々の人と意見交換をしながら、共に学んでいくことが大切ですね。
市民レベルで交流し、韓国と日本の市民が一緒に学ぶ取り組みは、ずっと前からすでにあります。
それから、歴史学者が共同研究したり、韓国・中国・日本で作った歴史教材もありますね!
「日本」が「好き」って何だろう?
最後に。
(「親日」という概念とは関係なく)「日本が好き」という言葉、良く使われる言葉ですね。
逆に「嫌い」に置き換えても使えてしまいますね。
では、「日本」が「好き(嫌い)」とは、一体何でしょうか?
日本の「文化」についてでしょうか?
「文化」といっても、多くの文化が根付いており、もっといえば「ひとりひとり」に文化はありますよね。
「日本の」というと何を指しているのか…ぼんやりとしてしまいます。
では日本の「風習」についてでしょうか?
これも、様々な「風習」があり、悪い風習もあって、社会問題になっていたりしますよね。
「日本人」についてでしょうか?
でも、人間は、ひとりひとり違います!
さらに「日本人」とは何を指しているのでしょうか。
「日本国籍を持っている人」のことでしょうか?
(起源と呼ばれる)「縄文人」と「渡米人」の「混血」の人たちの子孫のことでしょうか?
日本国籍を取得した人、二重国籍を持っている人はどうだろう?
子どもの頃からずっと日本に住んでいる人もいるし…。
2つのルーツを持っている人は?
こうして、紐解いていくと、「国」「民族」単位で「好き(嫌い)」という思考も、成り立たないことが良く分かりますよね。
こういったテーマで哲学対話をするのも 楽しいですし、改善していくヒントを与えてくれそうです!
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