最近、またFrank Oceanの『Bad Religion』が話題になっています。
そのタイトルゆえに、宗教を軽視している、とSNSで騒動になり、この楽曲をInstagramで紹介したアーティストたちまでが、一部のSNS利用者により誹謗中傷を受ける事態になっています。
では実際には『Bad Religion』は、どんな歌なのでしょう?歌っているアーティストさんのバックグラウンドと共に、見ていきましょう。
『Bad Religion』歌っているのは、Frank Oceanさん
『Bad Religion』を歌っているのは、アメリカのアーティスト Frank Ocean(フランク・オーシャン )です。
Frank Ocean
生年月日:1987年10月28日
出身地:アメリカ ルイジアナ州
職業:シンガーソングライター、音楽プロデューサー、ラッパー、写真家
【音楽での活動】
2012年 デビューアルバム『Channel Orange』と楽曲『Thinkin Bout You』のヒットで世界的に知られるように。
2016年 ビジュアルアルバム『Endless』・2作目のスタジオアルバム『Blonde』を発表。
『Blonde』はBillboard 200で1位を記録します。
【フォトグラファーとしての活動】
メットガラの写真をVogueに提供
イギリスのファッション誌i-Dに、表紙とビジュアルエッセイを寄稿(i-D)
Frank Oceanの『Bad Religion』は、どんな歌?
では、実際にどんな歌なのでしょう。聞いてみましょう。
『Bad Religion』
アーティスト:Frank Ocean
作詞:BREAUX CHRISTOPHER / GAMBETTA CHARLES / NUGENT WAYNNE JASON
作曲:BREAUX CHRISTOPHER / GAMBETTA CHARLES / NUGENT WAYNNE JASON
収録アルバム:Channel Orange
『Bad Religion』は、報われない愛の苦しみを歌っています。
ああ、この報われない愛
私にとって、それはカルト(狂信)に他なりません
それは良くない宗教です 誰かに恋をすること
決して愛することができない人を愛すること
Love me, love meの繰り返しのフレーズは、直訳ですと「私を愛して」ですが、決して叶わない、というニュアンスが切なく響きます。
“Allahu akbar”のフレーズについて
歌に出てくる「He said “Allahu akbar”」のフレーズですが、「アッラーフ・アクバル(アラビア語の اللّٰهُ أَكْبَرُ)」とは、「アッラーは最も偉大です」という意味で、礼拝前の呼びかけである「アザーン」や、お祈りの時に使われる言葉です。慣用表現としても、日常生活で良く使われている言葉です。赤ちゃんのお誕生や結婚式など、喜ばしい時にも用いられます。
この歌の自然な流れでいくと「He said “Allahu akbar”」や「And you say “Allahu akbar”」のフレーズの「彼」や「あなた」は、「あなたに神の祝福がありますように」と祈ってくれているんですよね。
歌の主人公は、タクシードライバーに、片思いの苦しさを吐露していて、その絶望する主人公に、”Allahu akbar”と声を掛けてくれた人は、相談に乗ってくれた タクシードライバーさんです。
“Bad Religion“のフレーズについて
「Bad Religion」は、特定の「宗教」を指すものではなくて、決して愛し合うことのかなわない人を愛する気持ち、この片思いは、(「宗教」ではなく、)良くない宗教のようだ、と、たとえています。
こうして歌を聞いてみると、この歌は決して「Islamophobia(イスラム教への宗教的偏見)」を歌った歌ではないことが解りました。
しかし、歌の歌詞を良く知らず、『Bad Religion』のタイトルだけで、誤解から、ダメージを受けてしまう人もいたのではないでしょうか。「Islamophobia」に遭ってきた人々なら、余計に…
Frank Oceanも、もちろん、誤解だと説明しています。
その上でOceanは、LIVEで、”Allahu akbar“のフレーズを、”God is Greater“「神は偉大なり」と、変えて歌っています。
歌の歌詞を良く知らない人に、誤解からのダメージを受けて欲しくなかったのでしょう。
Frank Oceanの〝カミングアウト″が、人々に希望を与えていた
Frank Oceanは、『Bad Religion』も収録曲であるアルバム『Channel Orange』(2012年)リリース直前に、初恋の相手が男性だったことを明かしています。
男性が男性を愛することは ごく自然なことで、〝カミングアウト″するほどのことではないと思いますよね。
しかし、当時のヒップホップカルチャーには、まだ〝同性愛嫌悪″が強く残っていたそうです。
その中での〝カミングアウト″は〝前代未聞″で、同性愛に対して差別的な発言も多かった当時のヒップホップカルチャーの中で、大きな意義のある出来事でした。世界的に大きな話題となり、Beyoncé(ビヨンセ)他、多くの有名人が、Oceanへの支持を表明しています。
Russell Simmons(ラッセル・シモンズ)は「今日はヒップホップにとって重要な日です。それは私たちが本当の人間であることを定義する日です。私はFrank Oceanの勇気と誠実さに深く感動しています。セクシュアリティを公表するというあなたの決断は、今も恐怖の中で暮らす多くの若者に希望と光を与えます。フランク、ありがとう。 私たちはあなたをサポートします。 私たちはあなたを愛してます。」と讃えています。
まとめ
先ほどの〝カミングアウト″にも見られたように、「マイノリティー」とカテゴライズされる人々の問題にも向き合ってこられたFrank Oceanさん。
きっと、『Bad Religion』に起きてしまった問題にも、心をいためたことでしょう。
今回の、楽曲『Bad Religion』の「炎上」の理由、誹謗中傷が起きてしまった理由は、〝誰かを叩きたい人たち″が、ムスリムの代弁者を装って、この問題を〝利用″したからです。
今回の問題に限らず、いかなる理由があろうとも、「誹謗中傷」は、やってはいけないことですよね。
そして、どんなに「誹謗中傷」が起ころうと、誤解だと説明し、その上で、歌詞を変えて歌ったFrank Oceanさん。
心を込めて、そしてはっきりと「あらゆる宗教を尊重している」と表明していた BTSのナムさん(ナムさんは、楽曲『Bad Religion』をInstagramで紹介しただけで、誹謗中傷が起こってしまったケースです)。
Frank Oceanさん、ナムさんが、また好きになりました。
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