2月19日、森川ジョージさんが「ヤンサンで言えなかったこと」と題して、Xでスペースを開かれていました。
2月21日現在では、その内容は録音公開されていないため、何が語られていたか、をお伝えしていきたいと思います。
ヤンサンとは? 2024年2月17日配信回の内容は
このスペースに先だって、2月17日に配信された「山田玲司のヤングサンデー」の緊急生放送で、漫画家の方々が集まり、「原作漫画家不遇問題」と「再発防止策」について話し合っています。
ヤンサンとは、YouTubeチャンネル「山田玲司のヤングサンデー」です。山田玲司さんが立ち上げた 生放送のトークライヴです。
2月17日の出演者は、山田玲司さん、奥野晴信さん
ゲストは、森川ジョージさん、里中満智子さん、湊より子さん
議題は、
- メディアミックスを成功させるには
- 芦原妃名子さんの事件の経緯
- この悲劇の責任はどこにあるのか
- 再発防止策
について。
丁寧に経緯を追い、実際にメディアミックスを経験する漫画家の皆さんの経験談が聞けました。その上で再発防止策が議論されていて、整理しやすくなっていました。
奥野晴信さんは「読者」目線で語ってくださり、山田玲司さんも、「主人公の田中さんがどんな生き方をしていたのか、物語をすごい繊細に積み上げている。何が読者を感動させたのか、読者を救ってきたのか、まず第一段階で理解したうえで、座組決めてほしい」と話します。
メディアミックスについては
「原作とは別物であるメディアを、俺らも楽しんでいる。俺たちのせいかもしれない。」
「それはポピュリズムの宿命的な問題。面白きゃいいって思っているお客さんがいて、売れりゃいいって思っているお仕事の方々がいて、命削ってこども(作品)作ってる人たちがいると。それぞれ違うことを思っている。ここの分断がすごくあるが、ちゃんと各所に良い人もいる」という話も出ました。
里中さんからは「漫画は目で読むセリフ、ドラマのセリフは耳から入るセリフ。漫画の作業と脚本の作業は全然違う。切り替えが必要で、かなりお疲れになったのではないか。」「芦原さんのコメントを見たら、とても丁寧に気をつかっていたことが良く分かる。」と、芦原さんの状況をおもんばかるコメントが。
湊より子さんは、涙で声を詰まらせるシーンが度々、ありました。
森川さんは、同じ悩みを抱えている人を助けなきゃいけない、とコメント。「新人さんたちが言いやすいような空気を作るために、みんなで努力した方がいい。悩みがあったら、僕のところにでもいいし、(相談に乗ってくれる人は)いっぱいいるので」
里中さんからも「しんどかったら、一旦休んでもいい。出版社を変えてもいい」という、悩んでいる漫画家さんへメッセージを伝えていました。
「再発防止策」では、知識を付けることの大切さが議題に上がります。以下、配信で話が出た「知っていたい大事なこと」です。
- 著作権は 素晴らしくて、物が出来上がった瞬間に、自動的に発生する。どこかに届け出なきゃいけないわけではない。(「著作権は出版社の物だ」と誤解している人も多いが、自分のもの。)
- 契約書は法律ではない。お互いに取り交わすもの。両者の合意の下に成り立つもの。
- 出版社の出してきたものには、ハンコ押さなきゃいけないもんだ」は誤解。
書面で協議するもの。その「土台」であり、足しても引いても良い。交渉して良い。自分と自分の作品を守るために。 - 契約書の雛型が漫画家協会にもある。
- (里中さん・森川さん)いつでも相談しに来てほしい。事例を聞くだけでもホッとする。
- 出版社も作家が選べる。
- 著作権は契約書より上位にある。契約書は法律ではない。
- ドラマ化等で、原作者の意にそぐわない事が起きた時、契約書が無くても、原作者はそれを差し止める事ができる。
- 著作財産権はお金、著作権人格権は心の持ち物。財産権は譲渡出来るが、「著作者人格権」は譲渡することは出来ない。よって、契約書で「人格権を行使しない」というのは、法律が認めていない。
- 文化庁のページもある・文化庁は意外と話の分かるところ
里中満智子さんは、契約は「自動更新」じゃなくて「自動消滅」にしているのだそう。
「もし契約続けたい場合は、消滅の3か月前くらいにお知らせください」として、続ける場合「1年毎に更新」という形にすると良い。
【講談社の事例】
講談社が裁判起こしたことがあるが、その時、講談社はNHKに勝っている。
すでに、著作権は契約書よりも強い。
裁判やって勝った事例は、いっぱいあるので、怖がらずに、過去事例を知って、実行してけばいい。(森川ジョージさん 談)
里中さんは、これは、漫画界に限ったことではない、とメッセージを送っています。
漫画に限らず、他の世界でも世の中色んな生き方があって、いろんな職業があって、その中で理不尽なことが日常にいっぱいある。全体の問題も含んでいる、と。そのうえで、こう伝えています。
「人間が作る社会だから、色々ありますけれども、一緒に改善していって風通しの良い世界に出来たらいい」
とても良い配信でした。
「セクシー田中さん」事件と芦原妃名子さんの無念を繰り返さないために〜里中満智子、森川ジョージ、湊よりこと考える「原作漫画家不遇問題」と再発防止策
森川さんのスペース(2024年2月19日)の内容は?
2月19日(未明)に行われた 森川ジョージさんのスペースは「ヤンサンで言えなかったこと」と題して行われ、多くの漫画家さんが聴きに来ていたほか、スピーカーとしても参加されていました。
ホストは森川ジョージさん
スピーカーは、湊より子さん、安藤正臣さん、双龍さん、アキヤマ香さん、渡辺潤さん、植田益朗さん、Yosuke Imanishiさん。
このスペースには、1,000人以上のリスナーが集まりました。
※このスペースは、録音公開は されていません。(2024年2月21日現在)
「イジメ」があったとしたら…という話について
湊より子さん「仮定の話として、良くイジメってあるじゃないですか。仮定の話ですよ。誰かが亡くなったとするじゃないですか。そしたら、やっぱり…」「え、(この話をしては)だめ?」
双龍「この辺にしておかないと。イジメがあったとか。犯人探し、ホントに始まっちゃいますよ。事情はきっとあったでしょう。当然あると思いますけど、結構もう、十分出ちゃってる気がします。」
森川ジョージ「うん。慎重にいきましょう。ここね。」
2月17日配信の「ヤンサン」では、湊より子さんが「私けっこう、その編集部にいた漫画友だちとLineしてるんで、言えないことがいっぱいありすぎて、言えません。ボロボロ本当のことというか、分かってきて、言えません。芦原さんがどんなことをされたのかも、言えません」と、思いを吐露していらっしゃいました。(これは、先日の小学館の発信について聞かれたため、応えたものでした。)
スペースでは、この話(仮定)になりかけた時、双龍さんと、森川さんは、「犯人探し」になってしまうのを懸念されて、止められましたし、湊さんも、ヤンサンで、はっきりと「言えません」とおっしゃっていました。
「もし、私が芦原さんの友達だったら、逃げろ、って言う」とも。
仮にイジメが本当にあったとしたら、それは必ず明らかにされるべきことですが、SNSの場ですることではなく、第三者委員会、場合によっては捜査の中で明らかにされることです。
ただ、仮に、ですが、もしイジメが本当にあったとしたならば、湊さんが今回 言及してくれたおかげで、隠蔽するようなことはできなくなっただろう、とも思います。
調査の結果を、待ちたいと思います。
「メディア化」された時、各々はどうだったか?
双龍さん「やっぱり今回の話って約束守っていないっていうものが出たじゃないですか。約束守られていないのがひどい、っていうだけで、そこのポイントだけで僕は怒りを表明してたんですけど。」
「話し合いをして、顔合わせてとか、せめて。それも無かったっていう話もあったんで。構造的におかしい。だから、そこを大事にするには、面と向かって打ち合わせをするべきだし、リスペクトがあるかないか、っていうのも面と向かったら分かるところもあるし。」
森川ジョージさん「こうしましょう。いまね、あの、植田さん安藤さんとか、実際の制作現場の人がいらっしゃるし、出版社の人も結構聴いてるんですよ。で漫画家さんも聴いてるんで。いろんな立場の人が聴いてるんで。原作者としていま、双龍くん、より子先生、アキヤマさん、潤ちゃん、います。スピーカーになっている人が。メディア化されて幸せだったかどうか。」
双龍「あ、僕幸せでしたよ」
アキヤマ香さん「あ、私も幸せでした。結構やっぱり脚本チェックとか大変だし、これこうしちゃうのか~、な時とかもあるけど、結果的にはなんかこう、良かったとは思っています。」
渡辺潤さん「あ、僕も、幸せでした。作品の細かい事言っちゃうと、そりゃ言いたいことありますけど、でもやっぱり作品の知名度が上がって、作品が育つ、みたいなのは正直ありますし、いい経験でしたし、その後もいい話があれば、乗りたいと思います。」
湊より子さん「私も嬉しかったし、良かったと思います。」
「あと、メディア化すると、次の仕事が入りやすいっていうのもあると思います。」
森川ジョージさん「広く遠くへ届けて頂けるから、幸せだと思うんですけど、僕の場合は、フィリピンのね、4階級制覇の世界チャンピオンのノニト・ドネアっていう選手がいるんですけど、彼が来日した時に『森川ジョージに会いたい』って言ってくれたんですよ。」
「取材したいと思って会いに行ったら、もうのっけから真柴っていって、真柴のマネしてくれたり。何で知ってんの?って聞いたら、本も読んでるし、アニメも観てるって言ってくれるわけですよ。もちろん通訳介してなんだけど。え、ドネアに届いてんだ!って。ドネアは、『一歩』観て やった、っていうわけですよ、ボクシング。(一同:「すご~い!」)ね、そういうの嬉しいよね、やっぱり。」
「後に井上尚弥と、ドネアが闘うことになって、どっち応援していいか判らなくなっちゃって」
「そういうの、良くあるよ、僕の場合。だから幸せだな、と思います。」
「こんな感じでね、ホントにwinwinでやっていただけるとね、ホントに良くて、ま、植田さんや安藤さんの手掛けた作品っていうのはホントにリスペクトがあって。原作者さんと仲良くやってるっていうんで、ホントにwinwinだと思います。ね、安藤さん。」
安藤さんのスタンス
アニメーション監督でもあり、演出家でもある安藤正臣さんは、ご自身の監督としてのスタンスや、富野 由悠季監督の演出術のお話しをされていました。
安藤正臣さん「ちょっとだけ語らしてもらえると、自分の監督としてのスタンスは、またかよって言われるかもしれないんですけど、富野さんが元なんですよ。」
森川ジョージさん「またかよ(笑)」
安藤さん「(笑)案の定! あの、富野さんが、『ブレンパワード』っていう作品やられてる時にDVD特典で、演出術みたいのを講演してる映像が入ってたんですね。
植田さんもしかして知ってらっしゃるかもしれないんすけど。そん中で語ってたのがすごくて、富野さんが演出の時に自分の個性出そうというやつは二流だと。
そんなものはやろうと思わなくたって勝手に出てくるものなんだから。その勝手に出てくるのが本物の個性であって、俺の個性を出してやろうってのはもう二流、三流だと。
あの個性のかたまりのような作しか作れないあの人がああ言うんですよ。びっくりしちゃって。
そういった意味だと、もしかしたら自分は作品、原作を預かるタイミングでは、この作品はどういう作品で、どういう風に人気があって、人気の理由というか、読者が喜んでいるのはどこなんだろうっていうのを、研究しているような気分になるんですよね。アニメ化してる最中の作業って。」
森川ジョージ「僕のね、一歩のキャラデザやってくれた杉浦くんていう人がいるんだけど、ま、知り合いだと思うけどね、それで一歩のキャラデザするじゃない、描いてる時に、どうしても森川さんと同じ年だから、ここのこの線は誰々に影響されてる、このポーズの立ち方は誰々だなとか、そういう風に歴史をたどって解析していくって言ってた。」
安藤さん「考古学的なのかもしれません。発掘する気分なんですよ。形をね、自分用に発掘してる最中に、自分の思ったような形に掘り出しちゃったら意味がないんですよ。
元々どういう形をしてるかを、掘り出したいんですよ。で、それの上で、その作品の個性がちゃんと乗っかるものが出来た時に、どこかで俺の個性ってのが無意識に出てるはずなんですよね。
俺はどっかでそれを客観的に見たいって欲望があるんですよ。申し訳ないけどそれはもう自己実現の部分なのかもしれないけど。俺はそこではらがすんでるんで極力、原作通りってのが一番ベストだなと思って素直にやれるっていうとこがあります」
「読者が喜んでいるのがどこなのかを研究」「歴史をたどって解析」「考古学的」…原作を大切にし、読者目線でお仕事されている方々の情熱が伝わってくるようでした!
学び多いスペースでした。その後は、ガンプラの話にもなったりして、ほっこりしました!
ぜひ、録音公開してほしいですね。
森川さんのスペースも、ヤンサンも、良い配信でした。
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