東京都知事選に名乗りを上げた蓮舫議員。
東京都民のかたは、蓮舫さんは、どんな業績を上げた人なのか、気になりますよね。
蓮舫議員といえば、民主党政権時代の「2位じゃダメなんですか」という発言が、当時取り沙汰されていました。
コンピューター開発費を巡って「厳しく詰め寄っていた」「最初から凍結ありきだったのでは?」そんな印象が残っている方もいると思います。
しかし、実際は、そうではなかったようですよ。
有権者の中には、民主党政権の頃を知らない方もいらっしゃると思いますので、解説していきます!
「仕分け」られたスーパーコンピューター開発って、どうなったの?
そう、スパコン開発のその後も気になりますよね。どうなったのか、見ていきましょう。
蓮舫さんの「2位じゃダメなんですか?」について
蓮舫さんといえば、2009年の事業仕分けの際の「2位じゃダメなんですか?」という言葉を連想する人も多いと思います。
さっそく、この言葉の意味を、解説していきますね。
これは、2009年、民主党政権の事業仕分けがあった時に「次世代スーパーコンピューター事業」についての議論の中での、蓮舫さんの言葉です。
【事業仕分けとは】
民主党政権で、2010年度予算編成のために、国家予算の見直しが行われました。
公開の場で、有識者の視点を入れながら、それぞれの事業ごとに 事業の必要性を議論し、「仕分け」するといったものです。
蓮舫さんの言葉が、変な切り取られ方をした
当時、「スーパーコンピューター」開発について、多額の国の費用が投じられており、また、開発途中の中で多くの問題点が出てきたため、議論となりました。
「2位じゃダメなんですか?」は、その「事業仕分け」の会議の中で出てきた言葉です。
当時はその言葉だけが切り取られ、テレビで繰り返し流されたため、まるで「凍結ありき」で「詰め寄っている」かのように誤解されてしまいます。
「2位じゃダメなんですか」という言葉は、一人歩きして、揶揄される対象に…。
しかし、それは議論の中のほんの一部なので、前後の文脈を見れば、そうでないことが分かります。
蓮舫さんの「2位じゃダメなんですか?」までの流れ
実際に議事録を読んでみると、蓮舫さんは「切り込み隊長」というより、双方の意見を解かりやすくまとめ、その上で建設的な質問・提案をしている、といった役どころでした。
では、当時の議題に上がった「問題点」をまとめてみます。
- この次世代スパコンの開発には、これまで545億円の国費を投入している
- 仮にこのシステムの本格的着手、製造を行えば、完成までに更に700億近くもの国費の投入が必要
- こうした莫大な税金投入に見合った効果、利益が得られるか否かについて、入念な検証が必要
- 理研と共同開発先の民間3社(富士通、NEC、日立)のうち2社が撤退を表明し、今後の見通しが不透明
- 2社の撤退によって、ハードの方式が「ベクトル・スカラー複合型」から「スカラー型」へ変更になった中で、ソフト開発を同時に行う意味があるのか
このように問題が多く、この先のリスクを鑑みると プロジェクトをいったん凍結して、戦略をきちんと練り直すべきではないか、という話し合いだったんですね。
実は、蓮舫さんが「2位じゃダメなんですか」という前に、泉さんが先に問題に切り込んでいます。
刷新会議の議事録(一部)を見てみましょう。
泉内閣府大臣政務官 (当時)
国民に伝わっているのは、例えば気象の予測が局地的にできるようになるということに、果たしてこれだけのお金を投じる必要があるのだろうかということも、実際にはなかなかつながってこないというのがあると思うんです。
泉内閣府大臣政務官 (当時)
もう一つは、アメリカが 24 年までに同じ 10 ペタのものをつくろうとされているというふうに伺っている中で、日本としてのトップワンでいられる期間は、どれくらいだと考えておられるのか。
恐らくアメリカが本気で挑戦をすれば、すぐまた順位が入れ替わるとい
うことが想定されるのではないかという中で、果たして一時的にでもトップを取るということの意味が、本当にどれくらいあるのかということも、併せてお聞きしたいと思います。
説明者((独)理化学研究所)
研究者の立場から発言させていただきたいと思います。
先ほどから、例えば費用対効果の話が出ておりますけれども、サイエンスには費用対効果に馴染まないものもございます。
勿論、経済効果とかそういうことも必要でございます
けれども、そういう部分がございます。(以下 略)
中村進行役
その一般論は皆さん共通の認識でございますので、これだけのお金をかけてこれを来年度やる必要性について、具体的にお答えください。
説明者((独)理化学研究所)
こうした国民に夢を与える、あるいは世界一を取ることによって夢を与えることが、実は非常に大きなこのプロジェクトの1つの目的でもあります。
ここですね。
蓮舫参議院議員
思いはすごくよくわかるし、国民に夢を与えるものを、私たち全員が
否定しているものでは全然ありません。
ただ、ちょっとわからないのは、今回あと 700 億円を投じて、今回のスパコンができること。この段階で既に 100 億円を超える予算超過をして、今後 700 億円を投じて国民に夢を与えたい。
それは本当にこの額が必要なのかどうかというところを、もうちょっと教えていただきたいんですけれども。
国家に必要な最先端 IT 技術の獲得が目標にあるんです、そして比較参考値で、今日いただいた中には、中国が1ペタを開発していて、アメリカが間もなくで、もう日本はアメリカの後にいるんだと。
世界一になる理由は何があるんでしょうか。2位じゃだめなんでしょうか。
あるいはアメリカがつくった後に、そこになってある意味ソフトあるいはどこかで共同開発、つまり日本とアメリカが一緒にできるような、何かそういう夢の共有というのは、できないんでしょうか。
なぜ1位なんでしょうか。
実際には、こういう流れでした。
蓮舫さんの前に、泉さんが もっと厳しい指摘をしていたこと・それに対し 研究者側(理化学研究所)がしっかりしたビジョンを答えられなかった(夢を与える、といった情緒的な答えのみ)ことが分かると思います。
つまり、この場面は、蓮舫さんが研究者に「気持ちは良く分かる」と寄り添いながら、中国・アメリカの研究が進んでいることを伝え、アメリカとその夢の共有をすることを考えられてはどうか?しかし他に「世界一」になるメリットがあるなら、教えてほしい、と、問いかけているんですよね。
もっと言えば「2位なら、できるかもよ!」という助け舟。
蓮舫さんが問いかけた後、開発者側の方が、どう答えたのかといいますと…
説明者((独)理化学研究所)
現在の科学技術では、スパコンなしでは最先端の科学技術の発展というのは、不可能に近いところがございます。
そして世界一の研究というのは、世界一の装置。
中村進行役
最初からお答えいただいていることに、2回も3回も結構でございますの
で。
やはり、「1位になることの意義、見通し」について説明できないまま「世界一」を繰り返して、進行役が苦言を呈する場面も…。
また、蓮舫さんは、こう提案もしています。
蓮舫参議院議員
松井先生に私から教えていただきたいんですけれど(中略)例えば1位ではなくても2位になって、後追いかもしれないけれども、多様なプログラムを提供することによって、これまで開発した部分を回収して、そこからもう少し発展できるような民間に何かプログラムを売ることはできるんでしょうか。
この「松井先生」というのは、当時、民間有識者のひとりとして「仕分け人」になった 松井孝典さん(東大教授)のことです。同じく東大教授の金田康正さんも、予算削減の議論に参画しています。
メディアで、民主党や蓮舫さんが、やみくもに反対したかに見える揶揄のされ方をしていましたが、実際は、このように「仕分け人」側にも専門家が入り、議論が行われていました。
(この 行政刷新会議ワーキングチーム「事業仕分け」第3WG(2009年11月13日)の議事録はこちら)
のちに蓮舫さんが語った「2位じゃダメなんですか」の真意
2018年のインタビューでも、蓮舫さんは「2位じゃダメなんですか?」の真意について、こう話しています。
「無尽蔵に税金が使われているので、『一体いつ実現するのか。2位じゃダメな理由を説明してください』と言ったら答えられなかった。説明なしで税金を使うことを問うのが事業仕分けだった」
ダヴィンチ 2020.12.23
もし、民間企業であれば、予算はもちろん、いつまでにどこまで進めるかの見通し、リスクヘッジ、マーケティング、それについてチームで共有されていて、聞かれた場合に答えられることは当たり前ですもんね。
もし研究者側から その答えが聞けたら、ではこの先、こう予算を使って、このようにやっていこう、と建設的な議論に進めた、ということなんですよね。
蓮舫さんご自身は、1位を目指すことについては、肯定的な人です。
この「仕分け」後、スパコン開発はどうなったの?
この時(2009年)の仕分けの結論は、「現行の計画のまま進めようとするなら予算を凍結すべき、計画を練り直したうえで再度検討すべき」という結果になりました。
その後、文科省は仕分けでの指摘を踏まえた計画に変更、110億円の予算が付き(文科省の要望の半額以下でしたが…)、スパコン「京」が、2011年に完成しています。
「京」は、回転速度のランキング「TOP500」で世界一となりました。
後に文科省は、「スピードの世界一ではなく、省エネ性能などの総合的な性能を追求する」と方針を変えています。
さらに、利用者の使いやすさに重点を置いて開発されたスパコン「富岳」は、2020年6月・11月にランキング「TOP500」「HPCG」「HPL-AI」「Graph500」の4つの部門で世界一に輝きました。
そして2023年まで8期連続で「HPCG」・「Graph500」の2部門で、「富岳」が世界一となっています。
(参考:Yahoo!ニュース 2019.9.9 、EE Times Japan 2020.11.17 、日経X TECH 2023.11.14 より)
「富岳」を開発した松岡聡さん「グッドな質問」
また、「富岳」の開発者・松岡聡さんは、2022年の読売新聞のインタビューに、当時の「2位じゃダメなんですか」の問いについて「思えば、非常にグッドな質問なんです」と答えています。
あの時、研究者側が答えられなかったこの問いに、松岡さんは、科学者として この質問にどう答えるか、考えたといいます。
「重要なのは使い勝手。速度よりむしろ、多様な研究の役に立つかが本来だ。
『2位でもいい』と答えてもよかった。ただし、何の研究のために、どんなマシンが必要なのかを明快に説明できなければならなかった」
読売新聞オンライン 2022.11.14 より
「富岳が、蓮舫さんの問いに対する我々の答えなんです」。松岡さんは力強く語る。
読売新聞オンライン 2022.11.14 より
議論されてきたからこそ、仕分けでの指摘を踏まえて、計画をアップデートしてこられたのですよね!
蓮舫議員が都知事選に出馬、マニフェストは?
蓮舫さん、都知事選出馬を表明し、5月27日に会見も行いました。
蓮舫さんは会見で、こう訴えました。
「格差で光が当たらない、困っている人たちに、私は政策を届けたい。仕事を、食べ物を、安心を、子供たちには教育の充実を届ける。そんな都政を作りたい。」
TBS NEWS DIG Powered by JNN 2024.5.27 より
マニフェストは後日とのこと。どんな公約を掲げて闘うのか、楽しみです。
東京都知事選はいつ?
東京都知事選は2024年6月20日告示、7月7日投開票です。
都知事選の候補者たちのマニフェストが出るのはこれから。
しっかり読み込んで、投票したいと思います。
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