「過ちは繰返しませぬから」に「被害国」なのに何故?の疑問に答えます【広島平和都市記念碑】

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毎年8月6日に、広島の平和記念式典が行われると 度々、記念碑に刻まれた「過ちは繰返しませぬから」の文章が注目されることがあります。
「日本は“被害国”なのに、なぜ“過ち”と書かれているのか」という疑問が、SNSなどで見られます。

もちろん 日本は唯一の戦争被爆国ですので、この碑文の意味を、良くご存知の日本の方は多いです。
しかし、まだ知らないよ、という人がいたりだとか、このような疑問を持つのは、悪いことではありません。
疑問に思った人が、聞きやすく、学びやすい雰囲気は、とても大事です。

今回は、なぜ「過ちは繰返しませぬから」なのだろう?について、解説していきたいと思います。

目次

記念碑の碑文、説明文 全文

まずは、この碑文と説明文について、共有しておきたいと思います。

広島平和都市記念碑
(出典:総務省)
広島平和都市記念碑(原爆死没者慰霊碑)
(出典:総務省

広島平和都市記念碑(原爆死没者慰霊碑)中央の石室には、原子爆弾によって犠牲となられた方々のお名前が書かれた名簿が納められています。(名簿への記載に際して、被爆者健康手帳の有無や、国籍を問うことはありません。)

今年(2025年)、この1年に確認された 4940名の被爆者の方々のお名前が、新たに2冊の名簿に書き加えられ、慰霊碑に奉納されました。掲載されたお名前は、34万9246人となりました。

(参考:中国新聞 ヒロシマ平和メディアセンター 2025.8.6

石碑に刻まれた碑文

慰霊碑中央の、石碑前面には、こう刻まれています。

広島平和都市記念碑 中央の石碑 「安らかに眠って下さい 過ちは 繰返しませぬから」と刻まれている (出典:総務省)
広島平和都市記念碑 中央の石碑
「安らかに眠って下さい 過ちは 繰返しませぬから」と刻まれている
(出典:総務省

「安らかに眠って下さい 過ちは 繰返しませぬから」

記念碑についての説明文

慰霊碑前の「平和の池」には、この慰霊碑についての説明板が設置されています(多言語の説明版があります)。

以下は、説明文全文です。

広島平和都市記念碑(原爆死没者慰霊碑)前の池に設置されている説明板
(出典:総務省)
広島平和都市記念碑(原爆死没者慰霊碑)前の池に設置されている説明板
(出典:総務省

広島平和都市記念碑(原爆死没者慰霊碑)
昭和27年(1952年)8月6日設立

 この碑は 昭和20(1945)年8月6日 世界最初の原子爆弾によって
壊滅した広島市を 平和都市として再建することを念願して設立した
ものである
 碑文はすべての人びとが 原爆犠牲者の冥福を祈り 戦争という過ち
を再び繰り返さないことを誓う言葉である 過去の悲しみに耐え 憎しみ
を乗り越えて 全人類の共存と繁栄を願い 真の世界平和の実現を祈念
するヒロシマの心がここに刻まれている
 中央の石室には 原爆死没者名簿が納められており この碑はまた
原爆死没者慰霊碑とも呼ばれている

(引用元:総務省

何故「過ちは繰返しませぬから」なのか?

それでは、本旨である、「なぜ『過ちは繰返しませぬから』なのか」を、解説します。

碑文の主語は「人類」です

前述の「説明板」を読んで「そうか、解った」という方もいらっしゃるかと思います。
はい、貴方が気付かれた通りなんです。

これは、碑文にあるように、「すべての人びと」、つまり主語が「人類」となっているんですよね。

「アメリカ」「日本」「国」といった、狭い枠や小さい概念ではなく、「人類として」「戦争をしたこと」を「過ち」と指摘しています。

※ですので、「日本だけ」を指しているものでもありません。
「人類」が主語ですから、日本も、アメリカも、ドイツも…全ての国や地域の人々が、この中に入っているわけです。

「戦争」という、「人間」が起こした愚かな行為を、再び繰り返さないための努力を怠りません、という誓い、決意が、そこにあります。

戦争により犠牲になった方々の無念は、私たちがそうすることで、引き継ぎますから
どうか安らかに眠ってくださいという鎮魂の想いです。

─広島市のホームページから─

広島市の公式ホームページにも、説明板と同じように、この碑文について、こう記載されています。
広島市 市民局国際平和推進部 平和推進課のページ内にあります。)

この碑文は、すべての人びとが原爆犠牲者の冥福を祈り、戦争という過ちを再び繰り返さないことを誓う言葉であり、過去の悲しみに耐え、憎しみを乗り越えて、全人類の共存と繁栄を願い、真の世界平和の実現を祈念する「ヒロシマの心」が刻まれているものです。

(引用元:広島市公式ホームページ 2025.2.16

(※太字装飾は、解かりやすくするために 筆者が付けています。)

「全人類」への言葉の意義は大きい

この文章の活きているところは、「全人類」に向けた言葉であることです。

国境で分断せず、

人間として
人として

生き残った私たち、その子孫として生まれた私たち地球人は、どう協力し合って、戦争を起こさない、あるいは今起きている戦争を無くしていくか、「共に」行動していこう、
というメッセージになっています。

多言語での説明板があるのも 良い

世界中から訪れてくれる方々のために、多言語の説明板が設置されているところも、活きてくると思います。

ハングル、ロシア語、ドイツ語、英語、日本語、フランス語、イタリア語、中国語(簡体字)、8か国語の説明版があります。

説明板は、水の中から白い文字が浮かび上がるデザインで、広島市立大学 芸術学部 デザイン工芸学科の吉田幸弘教授がデザインしたもの。

劣化のため、何度も新しい材質のものに改良されてきました。
現在(2025年現在)の説明板は、広島西ロータリークラブから寄贈されたステンレス製のものです。

筆者は、ヘブライ語、ヒンディー語、ウルドゥー語などもあったら良いと思いますし、さらに多くの言語で書いて、ここを訪れてくれる 様々な国の人々と一緒に、平和、核廃絶を考えたいです。

石破首相が 6日の「被爆者代表から要望を聞く会」で言っていたように、広島を訪れる外国の方は増えています。
石破さんが、2年前に原爆資料館を訪れた時に見たのは、アメリカの方々が展示を見た後で 頭を抱えて座り込んでおられる光景だったといいます。(下記ポスト内映像では 2:33頃~)

また、「原爆投下は戦争終結に必要であった」という言説については、アメリカでも年々「そう思わない」という人が増えてきています。
2023年のアメリカの映画「オッペンハイマー」は大ヒットしました。

記念碑に刻まれている、「安らかに眠って下さい 過ちは 繰返しませぬから」という、広島発信の「全人類への言葉」は効いてくるし、効いていると思います。

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