石破茂さんは「左派/リベラル」なのか「保守」なのか?

当ページのリンクには広告が含まれています。当サイトは広告収益によって運営されております
広告

昨今、「石破首相は“左派”だ」という声が、よく聞かれます。
いわゆる「右派」を自認する人からも、そして「左派」を自認する人からも、そのような声を目にすることがありますよね。

では、石破茂さんは、実のところ「左派」なのでしょうか?
実際に、彼の具体的な政治・政策を整理してみました。

それを見て、皆さんそれぞれ、判断してみてください。

目次

石破茂さんは、「左派」/「右派」どっち?

「左翼」vs「右翼」のイメージ画像
人形が、「左翼」「右翼」と書いた積み木の上に立っている。
人形の間には「v」「s」の積み木があり、対立する様子を表している
(出典:Free画像 PhotoAC)
(出典:Free画像 PhotoAC)

石破茂首相が「左派」であり「リベラル」だ、という声は、とりわけ今年(2025年)が目立っている印象ですが、実は そういった声は 2017年頃(第4次安倍内閣の頃)からあります。

一方、石破さんは昔から「保守」であり「タカ派」だとも言われてきました。

では、果たして石破さんは「左派」・「右派」どっちなのか?
「リベラル」なのか?「保守」なのか?

どっちなの?

単純な「カテゴライズ」の限界

まず結論を先に言っておきますと、

石破茂さんのような政治家は、「保守」「リベラル」、「タカ派」「ハト派」などの、単純な「イデオロギー」では括れない存在だということです。

「右/左」「保守/リベラル」「タカ派/ハト派」といった分類は、あくまでも「その時どきの、その政治家についての“立場”を有権者が“ざっくりと”理解するためのラベル」です。

皆さんも選挙の度に、「政策ごとに支持する候補者が違う」と、投票先を迷った経験があるのではないでしょうか。


石破さんに限らず、現実の政治というものは、複数の要素があり、市民の生活が良くなるための政治、国際社会の一員としての政治…等々、実に様々なアプローチがあるわけです。

政策によって多面的な考え方があるのは、むしろ当たり前。
ひとりの人を「何派」と一言で括る自体がナンセンス、とも言われます。

逆に、政治家が「支持者の支持を得るためだけの」政治をしたら、どうでしょうか。
そうであればあるほど「○○派」「○翼」などのカテゴライズに、「がっちりハマる」ともいえますよね。

石破さんの政治的スタンスは?

では、石破さんの政治的スタンスは、実際にどうなの?という疑問を、解き明かしていきたいと思います。

結論、先ほどの「“ざっくりと”理解するラベル」に当てはめるのであれば…

  • 「保守本流」と言われる。「タカ派・ハト派」分類でいえば、両方の要素を持ち合わせる。
  • 社会政策では中道「リベラル的姿勢を持つ。

という呼び方が、彼に近いのではないかと思います。
それぞれの「要素」に分けて、整理してみたいと思います。

石破さんは「保守本流」といわれる

「保守本流」は、戦後日本における理性的・平和志向・国民生活重視の保守思想の系譜、と呼ばれているものです。

「保守本流」の代表的な理念は、次の通り。

  • 戦争への反省
  • 国民の暮らし中心の経済政策
  • 対話尊重(異論への寛容さも含む包容力のある保守)
  • 対米自立を重視する

その「源流」は、石橋湛山から来ているものです。(参考:週プレNEWS 2024.12.10

【石橋湛山とは】

石橋湛山(いしばし・たんざん) 1884年(明治17年)~1973年(昭和48年)

湛山の理念…小国主義(縮小国家論)、脱軍国主義・平和主義、アジアとの共存共栄(中国・朝鮮との関係)、言論の自由と民主主義の擁護

短期間ながら首相も務め、「最も良心的な首相」として高く評価されています。
(※脳梗塞により退陣したため短期間となったが、辞め方の潔さに感銘を受けた議員も多かったという。)

こういった理念は、石破さんにも共通するところがあります。

もう1つ、別の潮流があり、それを「自民党本流(傍流・清和会系)」と言います(岸信介からの系譜)。
こちらは「保守本流」とは対照的で、戦前回帰、アメリカ依存的な外交、等の特徴があります。

石橋湛山退陣後に首相となったのが 外務大臣の岸信介でした。
当時 昭和天皇は湛山に「どうして岸を外務大臣にしたのか。彼は先般の戦争に於いて責任がある。その重大さは東條(英機)以上であると思う」と言っています。
(参考:週刊現代 2023.7.18
(※岸は終戦時、A級戦犯被疑者として巣鴨拘置所に拘置されていた人。その後、不起訴になり釈放されます。)

1959~60年の安保闘争時、首相であった岸が、デモ隊に対抗する行動部隊として右翼を使い、暴力団を動員したことも有名です。統一教会との繋がりも、このころから。
(※ ちなみに、岸信介の孫が、安倍晋三 元首相です。)

岸の独裁的・強権的政治は きちんと批判されるべきですが、

一方、岸信介は、国民年金法、国民皆保険、最低賃金法などを推進、
学校施設の国庫負担制度を確立したり等、国民の生活の向上にも努めました。

「自民党本流」の源泉に位置する人物ではあるが、ちゃんと「保守本流」の政治もやっているじゃないか、という。
これは、きちんと評価した方が良いと思うのです。

「理論派タカ派」「穏健保守」など様々な異名をとる石破さん

「保守本流」の系譜を継ぐ石破さん、と言われる一方で、石破さんは、「理論派タカ派」とも言われています。
「タカ派」でも、「ただの強硬派とは一線を画すタカ派」というわけです。
「保守合理主義」「理論的保守」「政策通」「制度派」とも呼ばれます。

「リベラル寄り」の層からは「対話のできる保守」「敵ではない保守」という呼び名も。

石破さん、「穏健保守」とも呼ばれているんですよね。
「タカ派」の対義語なのに「うん、うん、それも当てはまるね」と納得してしまう。

表現の仕方は色々ですが、石破さんの特徴は「制度と法の整合性にこだわる」スタンスをずっと取ってきたところです。

以下に、まとめてみました。

石破さんが「タカ派」といわれるところ石破さんの「理論的保守」・「制度派」要素
軍事・安全保障政策に非常に詳しく、「軍事オタク」と言われることもある

・「軍事オタク」といっても、
軍事・国家安全保障・独立主権を重視する理論的・現実主義的保守。
(感情的ナショナリズムに依存する極右ポピュリズムとは、大きく異なるだろう)

※石破氏は、第1次・第2次小泉内閣で防衛庁長官、福田内閣で防衛大臣をつとめた。

・石破氏は書籍を出版、理論・制度・多角的な「軍事の現実」について書いた。
自衛隊や防衛省の現場への視点、制度の課題を見据えた提言も。
(参考)
『軍事を知らずして平和を語るな』 (清谷信一氏との共著・2006年)
『日本の戦争と平和』(小川和久氏との共著・2009年)
「改憲」に前向き(9条2項削除論)
9条2項を削除し、自衛隊をより明確に位置づける形での改憲を支持
「加憲案」(2項を残しながら自衛隊明記)について、異を唱える
・改憲論者ではあるが、改憲のペースについて「10~15年かけて国民に訴えるべき課題」と述べ、「発議のしやすさ」を優先する党内の議論プロセスには反対する。

・安倍首相が2020年の改憲施行を目標とした方針に対して、「勢いで改憲していいはずがない」と諌める。

・「十分な議論」と「国民への理解」が不可欠である、という立場は一貫している。
NATO的な集団安全保障の構想に前向き石破さんも、NATOのような「制度化された軍事同盟」をアジアでそのまま実現することは、現実的ではないと認識しています。

アジア版NATO「的」構想を支持する、ということで、
QUAD(日米豪印)・AUKUS(米英豪)のような連携を強化する、という意味での構想です。

※ QUAD・AUKUS どちらにも、NATOのような「集団的防衛義務(第5条)」はありません。

(※筆者より…日本の憲法上、軍事同盟参加には制限があります。また、「同盟」が地域の緊張を高めることにもなりかねず、この構想には 課題や限界があることも、付け加えておきます。)
「共謀罪の導入はテロ対策に有効性が高いと思っている」とブログで発言石破さんは、国民の人権を守るため、丁寧かつ真摯な説明責任を怠ってはならないとの立場を取っています。

・「その運用には細心の注意が必要」

・「“組織的犯罪集団”に限定し、“犯罪の実行に必要な準備その他の行為”があった場合に限る」

・「日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に制限してはならない」

・「労働組合その他の団体の正当な活動を制限することがあってはならない」

(参考:石破氏によるHUFFPOSTの記事 2015.11.21
2013年、幹事長だった石破氏が、特定秘密保護法案に反対する国会周辺のデモについて「単なる絶叫戦術はテロ行為」と、自身のブログに書き込んだことがあるその後、すぐに同じブログにて「お詫びと訂正」を出します。
デモや集会については、「いかなる主張であっても民主主義にとって望ましいものです」とし、
「一般市民に畏怖の念を与えるような手法」については「テロと本質的に変わらない」の部分を撤回、「本来あるべき民主主義の手法とは異なるように思います」と改めました。

(※筆者より…特定秘密保護法には、第12条に「テロリズム」があり、石破氏が「デモをテロ」と呼んだことは、皮肉にも、この法案の危険性を二重に浮き彫りにしました。
この「特定秘密保護法」は、2014年に施行されています。)


・2013年12月の 石破茂幹事長記者会見で、石破さんは
「秘密の取り扱いには、統一基準が必要」
「本来秘密でないものを秘密指定するということがあってはならない」
「そういうものは、きちんと公開をしていく」
と、透明性・適切な運用への姿勢を明確にし、
「法案の提出前・後に、国会での丁寧な審議・意見交換の場をもっと設けるべきだった」と、反省を口にしています。

この時の石破さんの言葉。
「事前に多くの方々の広範なご理解を得る、あるいは我々が気づいていないような論点もご指摘いただく。
それに対して我々が答えをきちんと知らせていくという努力は、さらにしていかなければならないものだということです。」



(※筆者注釈…この、公務員や政府と契約関係にある民間事業者対象の「特定秘密保護法」を、さらに民間まで広げたのが「経済安保情報保護法」。2025年5月16日に施行されています。)

・これに先んじて2025年1月に行われた6回目の諮問会議では、パブコメをふまえた修正案が議論されています。

「拡張解釈への懸念や報道・取材の自由への配慮」について「政府において一体感のある運用も含め、説明責任を果たし、報道の自由への配慮についても、丁寧に対応する」ことが確認されました。

会議後、石破さんは、官民連携による基盤強化を重視する姿勢を明確にし、ここでも制度の透明性と適切な運用を前提とした対応を強調しています。

なぜ石破さんが「左派」「リベラル」と言われるのか?

では「保守本流」の石破さんがなぜ、「左派/リベラル」と言われているのでしょうか?
ここでは、その理由について、見ていきたいと思います。

【1】党内で、きちんと物申していく姿勢 

石破さんはルールの透明性、丁寧な説明責任を重視する姿勢を貫いてきています。
自民党内での「主流派」と言われる人たちに対しても、真っ向から指摘します。

  • 安倍政権時代の森友・加計問題で「説明責任を果たすべき」と正面から指摘
  • 「密室政治」、「派閥による非民主的な決定プロセス」を批判
  • 自身の派閥(水月会)を解消。「派閥政治」をやめる
  • 市民との対話と説明責任を重んじ、「聞く政治」を一貫して主張。

石破さんは、同じ自民党議員から「お前、自民党の中にいながらなんだ、後ろから弾を撃つのかよ」と何度も言われてきました。

しかし、石破さんは、自民党支持者、または市民からの「これ自民党、おかしいよね」という声をきちんと拾い、党に対して言ってきました。

「自民党を良くしたいからこそ、38年間言ってきた」と言い、そこは一貫しています。

「自民党を批判する者=左派/リベラル」という語りは、ネットユーザーの間でも使われてきました。
しかし石破さんは、市民のため、党を良くするために、きちんと批判・指摘をしてきたのであって、「イデオロギー」でくくる、というのは不正確です。

また「政権批判=左派的だ」という語りもまた、誤りです。
「国民に対して、説明責任を果たすべき」というのは、国会議員として当然のことですから。

「異端児」といわれ、「主流派」「自民党本流」からは嫌われている、と言われていますが、自民党の一般党員や、市民からの人気は高いです。

【2】環境・人権にかかわる政策について評価され、「リベラル」と言われるように

石破さんは「脱原発」や「夫婦別性」の政策に、前向きです。
脱原発・再生可能エネルギーへの転換について、石破さんはこう述べていました。

(石破さん)ゼロに近づけていく努力を最大限にいたします。
再生可能エネルギー、太陽光であり風力、小水力、そして地熱、こういう可能性を最大限引き出していくことによって、原発のウェイトは減らしていくことができると思っています

(引用元:東京新聞 2024.8.24

また、「選択的夫婦別姓」については「あるべき」と述べています。

(石破さん)あるべきだと思っています。
男性であれ女性であれ、姓が選べないということによって辛い思いをしている、不利益を受けている、そういうことは解消されなければならない。同姓でいいんだよという方は同姓でいい。
しかしながら、別姓にならないことで、いろいろな不利益、権利の侵害を得ているとすれば、それは解消されるべきものです。

(引用元:東京新聞 2024.8.24

以上が、「社会政策では中道リベラル的」と石破さんが言われるゆえんですが…
しかしながら、環境問題、そしてとりわけ市民の人権にかかわる政策については、「保守」も「リベラル」もありません。

例えば、「選択的夫婦別姓」などは、本来、市民の当然の権利です。
「強制的夫婦同姓」である現行法律の不備であり、それを変えていこう、というのは、自然なことですよね。

市民の人権に関しては「イデオロギー」で阻まれるものではなく、「保守」も「リベラル」も一緒に、市民の幸せのために「選択的夫婦別姓」制度実現に向け、努力すべきものです。

ですから、「選択的夫婦別姓」に賛成する人=「リベラル」とカテゴライズすること自体、「二項対立」を生むこととなり、ナンセンスといえます。

前述したように「保守本流」は、国民の暮らしを重んじます。
「選択的夫婦別姓に賛成」は、まさしく「保守本流」であるともいえるでしょう。

また石破さんは、農業政策・地方活性化にも積極的で、「中央集権」に批判的スタンスを取っています。

【3】党内の「極右勢力・ナショナリズム」から距離を置いているから

石破さんは、自民党内の「極右勢力」とは、やや距離を置く姿勢を取っています。

理論派ですから、もちろんのこと、彼らの「歴史否定主義」や「感情的強硬論」にはくみしません。

「保守本流 × タカ派 × 論理主義」の石破さんですが、党内の極右ポピュリズム勢力と一線を画していることが、「極右勢力」の支持者の人々から「左派的である」と語られることがあります。

現在、「石破やめるなデモ」というムーヴメントが起きていることは、ご存知の方も多いと思います。

このデモは「左派/リベラル」の人々が行っているんだろう、と見る向きもありますが、実際に参加した人の話では、ふたを開けると
①自民党支持者が半分、
②「リベラル」政党の支持者が半分、
という体感だったそう。

まとめ

石破茂さんは「保守主流」の系譜を継ぐ、「理論的保守」「リベラル」の側面を持つ人でした。

  • 国家安全保障への強い関心
  • 市民のための政治。自由・人権を重んじる
  • 制度と整合性を優先する実務家
  • 保守主流であり、密室政治や派閥論理と距離を置く

石破茂さんとは─
政策通であり、保守主流とリベラルを実装している、制度重視のリアリスト」といえるでしょう。

貴方が知る石破さんには、どんな異名が合っていますか?

広告
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次