「原作」がドラマ化・映画化する時に、作品が大きく改変される、いわゆる「原作クラッシャー」問題。
それにもかかわらず、原作者と脚本家が信頼関係を築いたケースがありました。
とある作品のケースを、見ていきたいと思います。
「原作クラッシャー」でも、うまくいったケースは?
原作の大幅改変、で両方「良かった」と言われている作品、作家さんたちのケースをご紹介します。
(原作者とテレビドラマ側で、合意があり、コミュニケーションが取れていたケースを取り上げます。「改変」に対して、良い悪い、ではありません。見る人それぞれ感想は違いますので、見る方々にお任せします。)
「喰いタン」
原作は 漫画
「喰いタン」(くいタン)は、講談社の「イブニング」で2002年~2009年まで連載された漫画です。
単行本は、全16巻。韓国・台湾でも出版されています。
原作者は、寺沢大介さん。寺沢大介さんは「ミスター味っ子」(イブニング)、「将太の寿司」(週刊少年マガジン)などでも有名ですよね。
【内容】
主人公、高野聖也は「喰いしん坊探偵 / 喰いタン」の異名を持ち、「食べ物」から事件を解決していく探偵。
グルメとミステリーを組み合わせた作品で、コメディータッチに描かれています。
自身の作品である「ミスター味っ子」や「翔太の寿司」などのセルフパロディーネタも登場します。
グルメ漫画としても、推理ものとしても、コメディーとしても楽しめます!
【登場人物】
・高野聖也 資産家の遺児・小説家・名探偵である。幅広いファンを持つ小説家だが、締め切りを忘れたりすっぽかしたりする。探偵としては、料理や食材の知識を駆使して、見事に事件を解決していく。
・出水京子 高野の秘書であり助手。高野の奇行にあきれながらも、世話役・ツッコミ役として高野を助ける。
・緒方警部 警視庁のキャリア組の警部。高野の大学時代の後輩でもある。高野の証拠品のつまみ食いには手を焼いているが、よく高野に推理を依頼し、事件を解決に導く。原作では男性(テレビ版は女性)。
テレビドラマ化された
「喰いタン」は実写ドラマが、2006年1月~3月まで、毎週土曜日21:00~ 21:54に放送されました。
脚本は、伴一彦さん
主要キャスト
・探偵事務所「ホームズ・エージェンシー」キャスト
高野聖也 – 東山紀之さん
野田涼介 – 森田剛さん
出水京子 – 市川実日子さん
金田 一 – 須賀健太さん
オーナー – 伊東四朗
・警察「横浜みなと署」キャスト
緒方 桃 – 京野ことみ
五十嵐 修稔 – 佐野史郎
「喰いタン」は、ドラマと漫画とは、設定・物語ともに全く別物となっています。
原作者の寺沢大介さんが、ご自身の漫画の中で、高野と京子にこのようなセリフを言わせています。
京子「ドラマ化おめでとうございます!!」
「喰いタン」File041「下町商店街を喰い尽くす!」
高野「ああ あれね」
京子「ご自分の作品が連ドラになったんですよ!?嬉しくないんですか?」
高野「もちろん嬉しいさ。原作も名前が知れるようになって本も売れるし 増刷もかかって収入も増えるしね」
高野「だけど設定も変わってるし、何となく自分の作品じゃないような気がしてなぁ」
京子「そういうものなんですか」
高野「まぁマンガとドラマでは見せ方も違うし 違う作品だと思ってるけどね」
京子「小説ですよね 先生?」
高野は、漫画内では小説家ですものね(笑)
これは「喰いタン」のテレビドラマのことですね。
このメタフィクションを見た「喰いタン」テレビドラマスタッフが、寺沢大介さんの所に菓子折りを持参して謝りに行ったそうです。
寺沢さんは、高野に「漫画もドラマも両方面白い作品だから、どうか両方ともよろしく」とも言わせています。
そしてつい先日、「喰いタン」ドラマで脚本を担当した伴一彦さんご本人が、Xで こんなエピソードを教えてくれました。
先日(1月29日)の脚本家4人の座談会(「【密談.特別編】緊急対談:原作者と脚本家はどう共存できるのか編」)の中でも、脚本家の伴一彦さんが、「僕は全く原作者ともめた事はなくて、お友達になって、(原作者と)飲みに行って、というパターンの方が多いんですけど」と話していました。
「喰いタン」に関しては、登場人物も変え、ストーリーに関しても「ほとんど原作のエピソードも使っていないんですよね」と明かします。
「最後のスタジオ収録の時に(寺沢さんが)いらっしゃって、僕はちょっとドキドキしてたんですけれども、本当に面白かった、みたいに言っていただいて。それから結構、一緒に飲みに行くようになって。演出家の悪口を言ったりとかね」と寺沢さんとのエピソードを話していました。
※この対談動画は炎上し、現在削除されています。
【動画の炎上理由】
「Instagramでの数名からの 芦原さんへの攻撃性のある投稿」には触れず、黒沢久子さん(日本シナリオ作家協会理事)が批判も誹謗中傷もまとめて「私人逮捕YouTuber」と言及したことで、ことの本質が見えていない、という声が多く届きました。
また、黒沢さんの「原作者の方には会いたくない派なんですよ。私が対峙するのは原作であって、原作者の方は関係ないかなって」の発言と、動画を出したタイミング(芦原さんが亡くなられたニュースのあった当日だった)についても、多くの疑問の声が寄せられていました。
伴さんは、ご自身も参加したこの対談動画について、シナリオ作家協会チャンネルに対し、削除すべきではない、削除前に自分の声で説明すべきだ、と伝えていました。
伴さんのXリプ欄に届く意見や質問に対しても丁寧に答え、経緯についても説明していました。(連続ポストで説明しています。)
ひとつひとつの質問にも、丁寧に答えて下さっていました。
ドラマ「喰いタン」レビュー
では、「喰いタン」読者、視聴者の評判は、どうだったのでしょう?
東山さんが喰いタンこと高野聖也のイメージにぴったりと合ってる。
そして原作を16巻全部読んでいたので緒方警部がドラマだと女性であることにはかなり驚いた記憶。
寿司が使われた事件から始まるのも意外だった。
(Filmarksドラマ「喰いタン」の感想・評価 より)
漫画・ドラマ「喰いタン」は、どこで観れる?
・ドラマ「喰いタン」は、TSUTAYA DISCUSでレンタル出来ます。
・漫画「喰いタン」は、TSUTAYA DISCUS、DMMなどでレンタル出来ます。
「別の作品」として、それぞれが輝いていたケースだった
「喰いタン」のケースは、原作のドラマ化・映画化にあたっての「改変」というよりも、メタフィクションも含め「別の作品」として楽しんでいた作者さんたち、ファンの方々の姿が見えました。
となると、これは〝原作クラッシャー″というケースには、充たらないものと、言えると思います。
※もちろん、原作者が大切にしている作品のテーマ・読者のニーズは、個々の作品ごとに、そして作家さんごとに違いますので、基本は、原作のテーマに忠実であること、もしも変えざるを得ない場合は、丁寧にすり合わせをしていくことが大切なことなのだと思っています。
【関連記事】 ドラマ制作陣が原作をリスペクトするモデルケース(「クロサギ」)を通して、考える
コメント
コメント一覧 (2件)
喰いタンにしろ、原作リスペクトのクロサギにしろ、原作者と脚本家が「直」にコミニュケーション取ってますよね。原作者に会いたくない脚本家なんぞは言語道断だと思います。只、予算とスケジュールの限られている局側からしたら、すり合わせなんかで時間を喰わないそっちを重宝するという歪みがあるかもですね。
nothanさん
コメントありがとうございます。
はい、おっしゃる通り、予算とスケジュールの限られている現場の問題、構造の問題ということを、ドラマに携わっている複数の方々がXで発信して下さっていました。
日本テレビは、外部有識者も入れて調査チームを設置したとのことなので、今後も注視していきたいです。
本当に… 直にコミュニケーションを取れる環境を、どの現場でも作れるようにと、私も思います!