H&Mの広告が炎上で削除なぜ?その理由とは何か。「逃げ恥」ゆりちゃんの言葉から学ぶもの

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H&Mの広告が「炎上」し、いま日本で 話題になっていますね。

でも実際には、「何」が問題になっていたの?

という声も。

そこで、この記事では、

  • 「炎上」した広告の内容・経緯
  • 広告の問題点
  • SNSの声
  • 「逃げ恥」ゆりちゃんの言葉から学ぶ

を解説していきたいと思います。

目次

問題の広告は、どんな広告だったのか?

先ずは問題の広告、どんな内容だったのでしょうか?

H&Mが、オーストラリアのユーザー向けに配信した広告でした。(※現在は、削除されています。)

  • make those heads turn in H&M’s Back to School fashion.」のキャッチコピー
  • 同じ制服姿で、髪型も似ている女の子ふたりが、振り返っているところ。背景はすべてピンク色の通学バスの車内をイメージ。ふたりの持っている通学リュックもピンク色。

「make those heads turn in H&M’s Back to School fashion.」は、和訳すると「H&Mの新学期ファッションで、みんなの視線を集めよう」です。

この写真は、スクールバスの車内をランウェイに見立てているということでした。

(※現在は、削除されています。)

抗議の声

これを受けて、作家のMelinda TankardReist(メリンダ・タンカード・リースト)さんが、抗議しています。

Melinda TankardReistさん公式Xより

〝この Facebook のスポンサー付き広告にはどのような意図がありますか?

小さな女子高生は一般的に「注目を集めたい」とは思っていません。 私が学校で関わっている多くの人々は、学んだり楽しんだりするために放っておかれることを望んでいます。″

Melinda TankardReistさん公式Xよ”

また、心理学者のパム・スパー博士も、Xで、強くうったえかけました。

〝女子小学生に対して「視線を集める」ですって?
あなたがたの下劣な広告は、女の子に欲情しても大丈夫だという小児性愛者に迎合している″

Dr Pam Spurr公式Xより

また、他のXユーザーからは、

‘The whole point of school uniforms is to stop kids using brands to shame other poorer kids, quite apart from the seedy undertones this advert has.

この広告の怪しげな雰囲気とは別に、学校制服の本質は、子供たちがブランドを利用して、他の貧しい子供たちに恥をかかせるのを阻止することです。

H&Mブランドの服を買えない子がいるのだから、「新学期ファッション」で差をつけるべきではない、という意見も出ていました。(参考:ロンドンのオンラインメディア Mail Online 2024.1.22 より)

H&Mは、謝罪し、広告を削除

H&M Customer Service(H&Mカスタマーサービス)は、メリンダさんのポストのツリーにリプライし、謝罪しています(2月2日)。

H&M Customer Service

〝この広告は現在削除されています。この件により不快な思いをさせたことを深くお詫びし、今後のキャンペーンの提示方法を検討してまいります。″

H&M Customer Service公式Xより

H&Mは、パム・スパー博士にも、お詫びのリプライを送っています。

H&Mが ユーザーの意見を受け、問題と真摯に向き合い、広告を削除したことは、評価できると思います。

では次に、何が問題になっていたのか、整理したいと思います。

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問題点① 「turn heads」

「make those heads turn in H&M’s back to school fasion.」のキャッチコピー、こちらが大きな問題となっていました。

(先ほども書いたとおり)「make those heads turn in H&M’s Back to School fashion.」を訳すと「H&Mの新学期ファッションで、みんなの視線を集めよう」です。

「turn somebody’s head」は「振り向かせる」なのですが、これが性的魅力という文脈で使われること「も」あるといいます。

カッコイイ服を着ているので思わず振り向いてしまう、のニュアンスで 通常は使われているので、もちろん広告作成者の言いたいことは、性的魅力の文脈では無いと思われます。

しかし、多くの英語話者が指摘し、やはり連想させてしまう危険性がある以上、特にモデルさんが子どもの場合は、安全を守るため、より細心の注意が必要ですよね。

このキャッチコピーは、子ども・大人、男女問わずNGなのだと思います。

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問題点②「lookism」(ルッキズム)

また、メリンダさんは、Xで、こうも言っています。

〝マーケティング・チームと話し合って、「ルッキズム」を憧れのゴールとする文化の中で、すでに苦労している思春期前の少女たちの注目を集めないような何かを、考え出してはいかがでしょうか?″

Melinda TankardReistさん公式Xより

「『ルッキズム』は、モデルやアイドルなどを職業としている人には該当しない」という意見も見かけましたが、この服を買って着るのは、一般の学生さんたちであるので、そこをメリンダさんは的確に、学生さんたちに寄り添います。

誰かを「振り向かせる」、そのために着るのではない。「おしゃれ」は主体的に、自分のためにするものですよね。

オシャレな服や靴(コーディネート)
(出典:Free素材PhotoACより)
(出典:Free素材PhotoACより)

「逃げ恥」ゆりちゃんに学ぶ

ドラマ「逃げ恥」のこんなエピソードを覚えているでしょうか?

主人公みくり(新垣結衣)の伯母ゆりちゃん(石田ゆり子)は、化粧品会社「ゴダールジャパン」の広報本部長。

第9話で、ゴダールの地域限定広告が 上司によって、ひどく変えられてしまい、キャッチコピーは「細胞まで愛されたい。目指せモテ肌。」というもの。ポスターはピンク色。

ゆりちゃん、上司に直談判に行くんですよね。

私たちがこの10年守ってきたのはこれです。
「自由に生きるために美しくなる。」
現ユーザの9割がこのイメージを支持しています。

この広告を彼女たちがみたらどう思うでしょうか? ゴダールの価値をゴダールが否定する。
これが目くじらをたてる問題じゃないと本気で仰るのですか?

ゆりちゃんの この言葉が心に残っています。これを観て、共感した方は多かったと思います。

ゴダールの「自由に生きる。美しくなる。」というキャッチコピーはもちろん、お客様のニーズを理解し、お客様目線のコンセプトを上司たちに突きつけるゆりちゃんは、カッコ良かったですよね。

「ボディポジティブ」運動とは

「ゴダール」のような、主体的な「美」というコンセプトは、現実の世界の広告でも度々、打ち出されてきました。

ここで「外見を磨くことと『反ルッキズム』は、はたして両立できるのか」という問いが出てくると思います。

メイクアップアーティストで僧侶の西村宏堂は、

外見を磨くことと反ルッキズムは両立できる

と述べ、イギリスの俳優であるナオミ・ハリスも

フェミニストでありながら、ボンド・ガールになることは完全に可能よ

と述べています。

一方で、社会構造から来る問題には、引き続き注意しなければならないでしょう。

(参考:ルッキズムを捉え直す―障害の社会モデルの視点から― 佐藤さくら

「ルッキズム」は社会の在り方の問題であって、決して個人の「受容」「克服」が〝足りない″といった文脈で語られてはならないということは、肝に銘じておきたいと思います。

同調圧力など無しに、「メイクをしないこと」も「当たり前の選択肢」でなければ、両立するとは言えないですよね。

さて、2010年代からは、「ボディポジティブ」の概念が生まれ、ふくよかな体型の「プラスサイズモデル」が、世界中で活躍しています。

「痩せていることを美しい」とする価値観にNOを突きつけています。

ボディポジティブ」の考え方は、「ありのままの自分を愛すること」「すべての人がありのままで美しい」です。

このエンパワメントは、世界規模で展開されてきました。

日本人も活躍しています!

藤井美穂さんは、現在ロサンゼルスを拠点にモデルとして活躍しています。

こちらは、2013年から、プラスサイズモデルで活躍し続けている吉野なおさん。

エッセイストでもあります。

H&M広告について、日本での声は?

クリエイティブディレクターの引地耕太さんは、Xでこう話しています。

いや、これは確かに広告クリエイティブ制作に関わるプロとしての目線で客観的に見ても少なからずリスクは確かに感じる。

まず、コピーの「Make those heads turn in H&M’s Back to School fashion H&Mの新学期ファッションで注目を集めよう」という部分。またミニスカートや子供らしくない表情、背景のピンクなど。

これはどちらかだけであればそこまで大きな問題にはならなかったはずだが、アートディレクションとコピーの組み合わせによる表現的な誤解を招き炎上したと捉えるべきだろう。

例えば、アートディレクションで言えば例えばだが背景がピンクでなく青や緑、少女たちの笑顔だっただけで全く違った印象になったと思う。なぜ背景がピンクなのだろうかという理由は気になるし、なぜこのような表情を狙ったのだろうか? またまだ幼い年代の子供達へ向けて外見で「注目を集めよう」という見た目で注目を集めるべきであると煽る文言もコピーとして適切だったのだろうか?

また、広告制作のプロではなく同じくらいの娘を持つ父親でもあるのだが、その目線から見ても正直違和感を感じる。 これは表現の自由ということではない。アーティストでもない、時代と生きる必要のあるクリエーターは、社会的目線に敏感になる必要がある時代にあるということだろう。

引地耕太さん Xより

また、日本でニュースになった後のこと。
H&Mが削除した広告の少女たちと同じアングルで、バッグや背景も似せた上で、少女たちが自らのスカートをまくしあげて笑っている、という悪質な改変イラストをXにUPする、ということも起きてしまいました。

それは悲しいことでしたが…
それに対してハッキリと、「やめて下さい」と意見してくれるかたもいらっしゃいました!

小児性愛的な扱いや揶揄を避けるために広告を取り下げたのだから、商業作家が悪ノリや冷笑してしまうのはデザイナーや企業に対して軽率で侮辱的だと思います。 フィクションとして安全に楽しむためにも、現実の表現議論を揶揄することはやめてください。面白くないです

(Xで、改変イラストをUPしていたポストへのリプ欄より)

豪で「女児の性的客体化につながる」と批判されたH&Mの広告、さっそく日本のロリ漫画家さんが性的に改変したイラストをSNSにアップして何万ものいいねを集めてて、懸念が正しかったことを自ら立証してる

(Xより)

今回の H&M広告のケースを見て考える

色んな国で、未だ性犯罪が無くならないことが大きな問題ですが、それでもこうして、広告に問題があれば 改善していこうとする声が上がり、社会が成長していくのは良いことだと、今回のH&Mのケースを見て思います。

今一度「ゴダールのゆりちゃん」に、学ぶべきところがあるなぁと、考えさせられましたね。

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