脚本家が原作をリスペクトする「クロサギ」のケースから「ドラマ化」問題を考える

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漫画や小説が、ドラマや映画になる時、原作のテーマと大きく外れてしまう、いわゆる「原作クラッシャー」問題。

度々起きてきた問題ですが、今、業界も、 私たち読者・視聴者も、この問題に着目し 議論が巻き起こっています。

そこで今回、「脚本家が原作・原作者をリスペクトしている」作品を取り上げ、モデルケースとして、問題の解決方法を探ります!

目次

「クロサギ」のケースでは?

漫画や小説をドラマ化・映画化する時、「映像」という媒体に変わる事で すでに表現方法が異なることから、原作側と制作側の丁寧なコミュニケーションが大切になりますよね。

「原作を大切に考えていた」ことで知られるドラマ制作陣のケースを、見ていきたいと思います。

「クロサギ」原作者の黒丸さんが Xで意見ポスト

「クロサギ」原作者の黒丸さんが先日、この問題に触れ、ご自身の見解をポストしてくださっています。

黒丸さん公式Xより

「クロサギ」のケースについて、黒丸さんの連ツイをまとめますと…

  • 【黒丸さんのスタンス】 作品の柱や主人公のスピリットを歪ませなければ、むしろ「アイディア楽しみにしてます」体勢。映像ならではのアレンジメントで、 原作に無い素敵なシーンがたくさん生まれ、楽しみまくった。
  • 楽しめたのは、脚本家さんの原作リスペクトと、信頼関係があったから。
  • 原作者が、原作のどの要素を重要視しているか、映像化に際してどこまでをコントロールしどこからを手放すかは、原作者のスタンス次第。
  • 重要視する要素は、作者と原作ファンでも必ずしも一致しない。
  • 【脚本家とのコミュニケーションについて】 脚本担当の篠崎絵里子さんからは、何度も自分の原作解釈は間違ってないか、このアレンジにはこんな狙いがあるが大丈夫か、気に入らないところがあればいつでもなんでも言ってほしい、と伝えてもらっていた。
  • 【漫画の実写化の難しさについて】  映像は、金と人員と手間がかかっている。故に自由度は低く、関わる人が多い。ゆえに信頼関係が重要。
  • 【実写化における原作改変事情】 すべて脚本家さん主導というわけではなく、プロデューサーやテレビ局の意向、出演者側の事情がある。

また、原作ファンにとって「この改変は受け入れられない」ということが起きうる、ということについて、「原作をそこまで愛してくださって感謝しかないです。」とポストしていました。

黒丸さん公式Xより

漫画「クロサギ」について

作者:黒丸、夏原武(原案)

2003年11月~2008年5月 「クロサギ」(小学館「週刊ヤングサンデー」)
2008年6月~2012年8月 「新クロサギ」(小学館「週刊ヤングサンデー」、「ビッグコミックスピリッツ」)
2012年8月~2013年7月 「新クロサギ完結編」(小学館「ビッグコミックスピリッツ」)
2022年9月~2022年11月「クロサギ再起動-18歳新成人詐欺犯罪編-」(小学館「ビッグコミックスピリッツ」)

第53回(平成19年度)小学館漫画賞一般向け部門受賞作品。台湾、韓国、ベトナム、インドネシア、タイでも出版されている人気漫画です!

「クロサギ」あらすじ

父親が、金銭を巻き上げる「シロサギ」にはめられ、一家心中に追い込まれた家族。
その時、ひとりだけ生き残った息子、黒崎が、詐欺師をターゲットとした詐欺師「クロサギ」となり、父をはめたサギ師・御木本を破滅させるべく、立ち向かっていく。
だが、黒幕はもうひとりいて…

「クロサギ」は、各シリーズごとでも、詐欺事件の話ごとでも楽しめますが、やはり主人公を取り巻く大きな物語の流れがありますので、最初から読んでいく方がおすすめです。

「新クロサギ」からは、社会制度を悪用した事件をメインに取り上げています。

クロサギ・セレクション -詐欺から学ぶ現代社会の基礎知識-」(小学館)

身近な犯罪から身を守るために学ぶ「傑作集」も出ています!
「クロサギ」の数々の詐欺の話の中から「身近に潜む詐欺」の話を、2022年の法律に沿って加筆修正した本です。

サスペンス物語を楽しむのはもちろん、社会問題の勉強にもなりますね。

「クロサギ」の構想にあたっては、第1話だけでもノート2冊分、考えていたのだそうですよ!

良い作品は、こうした丁寧な作業で生まれるのだと、感嘆。

黒丸さん公式Xより

漫画「クロサギ」シリーズは、小学館amazon楽天などで購入出来ます。(2024年2月6日現在)

ドラマ「クロサギ」(2006年)について

2006年4月~6月、毎週金曜日 22:00~22:54放送(TBS系)

原作:黒丸、夏原武(原案)
脚本:篠崎絵里子
プロデューサー:伊與田英徳、松原浩(TBS)

【主なキャスト】
黒崎 – 山下智久
吉川氷柱 – 堀北真希
桂木敏夫(レストランバー「桂」のオーナー・詐欺師の元締め) – 山崎努
御木本篤(黒崎遼一を騙したシロサギ) – 岸部シロー
黒崎遼一(黒崎の父) –  杉本哲太
神志名将(キャリア刑事) – 哀川翔

主人公の背景など、原作のテーマ、ストーリーを踏襲し、詐欺にまつわる話は、「財団融資詐欺」「結婚詐欺」など、漫画で出てきた詐欺をチョイス、1話ごとに1つの「詐欺」が取り上げられるので、見やすくなっています。

ドラマ第10話に、「シロサギ 」役で 原作者の夏原武さん
最終話に、「刑事 」役で 脚本家の篠崎絵里子さんが、それぞれ特別出演しています!

ドラマ「クロサギ」(2006年版)は、TSUTAYA DISCASで見られます。(2024年2月6日現在)

「映画 クロサギ」(2008年)について

2008年3月に、ドラマ「クロサギ」(2006年版)続編の形で、「映画 クロサギ」(127分)が公開されました。

テレビドラマの放送終了後、多くの「続編希望」の声が寄せられて、映画化が決まったのだそうです!

原作:黒丸、夏原武(原案)
脚本:篠崎絵里子
プロデューサー:伊與田英徳

【主なキャスト】
黒崎 :山下智久
吉川氷柱:堀北真希
桂木敏夫:山崎努
御木本篤:岸部シロー
黒崎遼一: 杉本哲太
神志名将:哀川翔
桶川レイコ:飯島直子(特別出演)
白石陽一:加藤浩次
石垣徹:竹中直人

「映画 クロサギ」あらすじ

黒崎は、桂木の情報で、桶川レイコからの依頼を受けることになった。
石垣は、大物シロサギであり、巨大な詐欺事件を企んでいた。レイコも、石垣に大金を騙し取られた被害者である。
神志名刑事や、汚れた大企業のみをねらう詐欺師・白石もまた、石垣を追っていることを、黒崎は知ることに。黒崎は石垣を追い込むため、仕掛けをめぐらし、彼の懐に飛び込んでいく…

劇場版のストーリーは、原作単行本12巻のFILE.33「贈答詐欺」・FILE.34「倒産詐欺」がベースとなっています。

映画「クロサギ」は、TSUTAYA DISCASで見られます。(2024年2月6日現在)

ムービーコミック「クロサギ」(2014年)について

ムービーコミックとは、漫画に音声や特殊効果を加えた動画です。

2014年2月より「UULA」にて全32話、配信されました。(※「UULA」動画配信サービスは、2017年3月で終了されました。移行先だった「ゲオチャンネル」は2017年6月で運営を終了、「dTV」は2023年6月で終了しています。)

【キャスト】
黒崎 –  逢坂良太
吉川氷柱 – 東城日沙子
桂木敏夫 – 小川真司

黒丸さんは、ムービーコミック配信にあたって、「すばらしいお声を付けて頂き、キャラクターたちに命が宿った」とコメントされていました。

【黒丸さんコメント】
おかげさまで去年完結を迎えた作品ですが、このような作品を作っていただけるとは、作者としてもビックリです。
個人的には絵が初期すぎて恥ずかしいの一言ですが、プロの声優さんにすばらしいお声をつけていただいて、キャラクターたちに命が宿ったと感じています。
読者の皆さんにも、新しいクロサギを楽しんでいただければ嬉しいです。

コミックナタリー 2014.2.10 より

同じく原作者(原案)の夏原武さんも、「流れるような展開・声優さんたちの表現が親しみやすく、愛読者にも初めての人にもおすすめ」とおっしゃっています。

【夏原武さんコメント】
作品をご存じで、漫画を読まれた方はもちろんですが、これまで読まれていない方にもおすすめできると思います。
また、漫画を違った形で・新しいスタイルで楽しみたいという人にもいいと思います。
クロサギはややもすると「難しい」といったイメージをもたれることもありますが、この新しいスタイルでは、流れるような展開と声優さんたちの表現力などもあって親しみやすいのではないかと感じています。

コミックナタリー 2014.2.10 より

ドラマ「クロサギ」(2022年)について

2022年10月~2022年12月毎週金曜日 22:00~22:54放送(TBS系)

原作:黒丸、夏原武(原案)
脚本:篠崎絵里子
プロデューサー:武田梓、那須田淳

【主なキャスト】
黒崎 –  平野紫耀
吉川氷柱 – 黒島結菜
桂木敏夫(2022年版では、甘味処「桂」の店主) – 三浦友和
御木本篤 – 坂東彌十郎
黒崎遼一 – 前川泰之
神志名将 – 井之脇海

2006年版ドラマは 漫画がまだ連載中、2022年版は 漫画が完結した後に出来ました。
2022年版は、「新クロサギ」「新クロサギ完結」まで含めた漫画シリーズを原作とした「完全版」のドラマです。

2006年版と、2022年版のドラマでは、「取りあげた詐欺事件」が違います。
M&A詐欺・出会い工作詐欺など、2006年のドラマ放送の後に漫画で登場した近年の詐欺を、プラスしたチョイスとなっています。

「クロサギ」が2022年にまた新たに企画された理由について、プロデューサーのお2人(武田梓P・那須田淳P)も、(2006年当時と違い)現代では、ネットやスマホの普及によって詐欺がすぐ隣にある脅威になっていること、現在は いろんな形の詐欺があり、内包している人間の欲望や恐怖を、ドラマを通してもう一度見つめ直したいという狙いがあると話していました。(参考:クランクイン!2022.10.21 より)

黒崎がクロサギになる起点、キャラクターの背景、黒崎がどんな人生を歩んでいくか、など、原作の大切なテーマが描かれていて、そこをワクワクしながら見てほしい、とインタビューで語っています。(参考:クランクイン! 2022.10.21 より)

また、2006年・2022年のドラマともに、篠崎絵里子さんの脚本です。

黒崎と氷柱の恋も、原作の大切なサブストーリーでした。
漫画でも、氷柱は想いを告白していますが、黒崎は断り、結ばれることはないけれども、互いに大切な存在なんですよね。

原作で大切にされているテーマを、大切に描いていく、ドラマ制作陣の熱意が伝わってくるインタビューはこちらです。

武田P:黒崎と氷柱に関しては、原作をお読みになっている方だと分かると思うんですけども、すごく悲しい関係。詐欺師と検事志望の女性っていう結ばれ得ない2人ではあるので、黒崎と氷柱が互いを思う心の変化みたいなところに、視聴者が切なくなったり気持ちが動いてくれるとこちらはうれしいなと。

那須田P:結ばれ得ない2人ではあるけれども、どうやって障壁を乗り越えていくか。未来を切り開いていくのか。そこには必ずヒリヒリする思いや、切なさもあるわけですよね。だからそういう点で視聴者の皆さんには、ぜひ黒崎と氷柱を応援してあげてほしいです。

クランクイン! 2022.10.21 より

作品愛もそうですが、「読者・視聴者目線」で考えてくれているのが解ります。

ドラマ「クロサギ」(新シリーズ2022年)は、prime videoU-NEXTTSUTAYA DISCASで見られます。(2024年2月6日現在)

「ドラマ化」にあたって大切にするべきこと

「クロサギ」を通して、脚本家・プロデューサーはじめドラマ制作陣による、作品や作品に登場する人物への理解・作品へのリスペクト、そしてこまめなコミュニケーションが大切なのだと、あらためて気付かされました。

そして、様々な制約や 改変せざるを得ない課題のある中で、それでもなお原作の魅力を最大限に引き出すことに尽力する、観てくれる人の気持ちをとことん考える、そういう事なんだなと。
「オリジナリティ」は書き手目線ではなく、原作を愛する読者・視聴者目線でなければならないですよね。

【関連記事】 原作を「大幅改変」して「うまくいった」ケースからも、考える

3枚の画像…「TV」の文字ブロック・漫画・ひとの頭の中に「CREATIVE」の文字イラスト (出典:Free素材より)
(出典:Free素材より)

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