ジェットスター、なぜこの時期にストライキ?世間では、応援する声も

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航空会社 ジェットスター・ジャパンの労働組合が、未払い残業代の支払い等を求め、一部従業員がストライキを実施し波紋を呼んでいます。

年末年始のタイミングでのストは、予約していた乗客も、対応するジェットスターのスタッフも大変。「なぜこの時期に?」と疑問を持たれたかたも多いと思います。その理由は何でしょうか?

その経緯を追いながら、解説していきます。

2024年3月に 不当解雇があり、再び交渉へ。3月28日、追記しました。

目次

ストライキ、なぜ今、この時期に?

「みんなが疑問を持っている」を表す画像
(出典:Free画像より)

なぜ今、帰省や旅行で多くの利用客が利用するこの時期にストライキなのか? 

結論から言いますと、ジェットスターは、最初から「年末年始のスト」を想定したわけではありませんでした

JCA(Jetstar Crew Association / キャビンクルーのために結成された労働組合) は今年(2023年)の5月に、会社側に求める要求書を提出しています。

【要求書の内容】
・変形労働時間制における所定労働時間外の労働に対する未払い賃金をすべて支払う
・休業開始後に一方的に減額された通勤費をすべて支払う
・組合活動のために必要とする会社所管の施設、設備等の便宜供与を認める

JCAは、会社側と交渉を続けてきましたが、満足な回答が得られず、8月3日に争議権(ストライキ権)を確立、8月14日には会社側が一括して支払うと回答し、一度はストを回避しています

しかし結局は 労働協約が締結できず、その後も前進が見られなかったことから、JCAは12月1日から争議行使へ、12月22日から指名ストに突入するに至りました。

このように、数ヶ月に渡り、幾度も交渉を重ねてきていましたが、残念ながら会社側から満足な回答が得られないまま、今日に至っています。

このように、従業員側としては、今回の年末年始のストに突入せざるを得ない、やむにやまれぬ状況があったことが解ります。

また、(今回のケースでいう年末年始のような)繫忙期のストを会社側に通告するのは、このような争議行為においては珍しくありません。

繫忙期のスト突入は、それまでに何度も交渉を重ね、それでもらちが明かない、そういった時の、最後の最後の手段です。

そもそも、ストライキとは?

ストライキとは、労働法で定められた争議権の行使形態のひとつ。会社側・従業員側の団体交渉が行き詰まり、それを打開するため、対等な立場で交渉を行うための手段です。

世界の労働組合のさきがけは、18世紀のイギリスでした。

日本でも、1945年12月22日に労働組合法が公布され(翌年3月1日施行)、労働者の団結権・団体交渉権・ストライキ権が保障されています。

日本国憲法第28条 条文には「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」とあります

日本ではストライキは少ない?

日本では、ストライキを含む労働争議の件数は減っており、ピーク時の1974年には1万462件あった労働争議の件数が、2022年では270件まで減り、過去2番目に少ない件数にとどまりました。(参考:厚生労働省 令和4年労働争議統計調査の概況附表 より)

ストライキを行わなくても、労働者側と会社側の意見調整が行いやすくなったこと・あるいは業績の悪化により、ストの効果が見込めないと判断され、現実的な改善策のすり合わせをするようになった背景から、スト自体は減ってきました。

今(2023年)では、日本の社会では 珍しくなったストライキですが、1970年代では、良くある光景で、筆者も、子どもの頃、「国鉄(現在の JR東日本)でストだって」等のフレーズを、幾度となく耳にしたものでした。

こちらは、1967年の京阪バスのストライキの様子です。(出典:毎日新聞 2017.5.21 より)

1967年5月21日の私鉄のストの様子 (出典:毎日新聞 2017.5.21 より)
1967年5月21日の私鉄のストの様子 (出典:毎日新聞 2017.5.21 より)

〝さわやかな風の吹く行楽日和だったが、中小私鉄の大半が日曜ストを決行し、約80万人の行楽の足が乱れた。
枚方の香里団地では京阪電車の駅に出る唯一の足を奪われサラリーマンらは「どこへも行かれへん」とあきらめて朝寝坊。
動かないバスを見て子どもたちもがっかり″

引用元:毎日新聞 2017.5.21 より)

このように、土日祝日のストライキも 行楽客の足に影響を与えるものでしたが、通勤・通学客に大きな影響を及ぼす平日に行われたストもよくありました。

公労協(公共企業体等労働組合協議会)が1975年に行った国鉄(現・JR)のストライキでは、11月26日~12月3日の8日間行われ、スト突入にあわせてサラリーマンが職場に泊り込んだり、学校が休校になったりすることもあったのです。

最近のストは?(日本と世界)労働者のストライキは「権利」

日本の最近のストライキでは、今年(2023年)8月31日に実施された そごう・西武の売却をめぐるストライキが印象的だったかたもいらっしゃることでしょう。日本の大手デパートとしては、61年ぶりとなるストライキでした。

そごう・西武労働組合が、ストライキすることを発表した会見の時には、競合他社である高島屋・三越伊勢丹・阪急阪神百貨店、大丸松坂屋百貨店の労組も出席するなど、「困った時はお互い助けようと。僕ら当たり前ですから。」と、そごう・西武労組を支援していました。(参考:REUTERS 2023.8.28 / テレ東プラス 2023.9.15

欧米では、現在(2023年)も大規模なストライキが多く行われています。

例えばイギリスは最近でも、時には数十万人という大規模なストが良く行われます。
こういったストの効果で、多くの労働者の賃金が上がっているそうです。

イギリス在住の堅田香緒里さん(社会福祉学者)は今年、朝日新聞のインタビューにこのように答えています。

〝公共交通機関が止まったり、クリスマスカードが届かなかったりすることに対し、人々に「迷惑」という感覚がないわけではありません。ですが、「スト、困るよね」と言った後で、「でもストは大事だよね」と付けなければならないような雰囲気が市民の中にあります。公的な態度として「ストは迷惑だ」と言ってはいけないという共通認識があるのです。″

朝日新聞 2023.10.7 より

労働者が要求を実現するためのストライキは「権利」という認識が社会に浸透しています。

では、日本の世間の声はどうでしょうか?

「年末年始時のスト」にもかかわらず 労働者側に共感する世間の声

フライト中の飛行機の翼 (出典:Free素材 pexels- Jess Bailey Designs より)
(出典:Free素材 pexels- Jess Bailey Designs より)

SNSでは、不便だという声をちらほら見かける一方、それよりも、労働者側を応援するコメントが目立っている印象です。

Xより
https://twitter.com/product1954/status/1740641038044422399
Xより
Xより
Xより

(ジェットスターの従業員ではなくても)「どこかの会社」の従業員である人は多いですよね。
労働条件に関して共感するところがあり、従業員の希望しているかたちの解決になるよう、自分と重ねて応援する声が多いものと思われます。

ストライキは「権利」という認識は、ストが減少した今もなお、日本の社会に浸透しているのかもしれません。

【2024年1月3日 追記】地震を受け、スト中止へ

ジェットスター・ジャパンの労働組合は、1月1日に起きた能登の大地震を受け、1月2日から1月7日までのストライキを中止し、さらに、1月1日時点で臨時便運航のフライト業務への協力要請も行っていました。(参考:弁護士ドットコムニュース 2023.1.1 より)

年内に解決せず、1月1日も会社側との折衝が続く中でのスト中止でした。

Xより

この度のスト中止は英断ですが、交渉もきちんと解決することを願い、今後も注視していきます。

【2024年3月28日追記】その後、不当解雇があり、再び交渉へ

能登半島で発生した地震で中断していたストライキですが、その後、組合の執行部の方が懲戒処分を受け、組合側が、この不当解雇の撤回を求めていました。

労働組合「ジェットスタークルーアソシエーション」(JCA)は、29日午前にストライキを実施する旨を会社側に通知していましたが、会社側がスト参加者に対し懲戒処分を検討する可能性があるため、労働組合は、3月29日のストは中止にすると発表しました。

組合員の安全を守る事が最優先であるとの判断です。

JCA公式Xより

正当な理由のない団体交渉の拒否は、労働組合法第7条で禁止されている不当労働行為にあたります。

もちろん労働組合の組合員であることを理由に従業員を解雇することも、不当労働行為です。

以下は、3月28日の実際の交渉時の音声です。

会社側は「影響度合によっては、懲戒処分を検討する可能性がある」(5:00分くらいの所)と発言していました。

JCA公式Xより

この記事で取り上げたとおり、労働者のストライキは「権利」です。
会社側には、ぜひとも、今からでも労働組合法第7条を読み込んで勉強していただき、交渉に応じてほしいと願います。

なお、ジェットスターは、公式サイトで、2024年3月29日~31日の予約を取っている乗客に対し、手数料なしで振替を行う旨、アナウンスしています。

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