居酒屋チェーン、養老乃瀧が運営する居酒屋の女子トイレ内に貼られていた掲示物がSNSで炎上し、物議を醸しています。
この件について、養老乃瀧グループ公式が、謝罪しましたが、その謝罪がまた炎上しています。
何故でしょう。
問題点を見ていきたいと思います。
まず、話題の掲示物はこちらです。↓
(出典:養老乃瀧グループ公式Twitterより)
この掲示物を読んで、皆さんは、どんな感想を持ちましたか?
(もちろん「正解」は、ありません)
それをふまえて、このニュースを見ていきましょう。
「養老乃瀧」トイレの貼り紙炎上についての経緯
養老乃瀧グループ「一軒め酒場」川崎仲見世通り店の女性トイレに掲示されていた、この貼り紙を見て
同店を利用したことのあるお客さんのツイートです。
〝前に行った居酒屋のトイレにあった貼り紙思い出した……そういうつもりで入ったわけでもないのに、女ってだけで男の相手するの求められるのもうんざりするのに、それをまさか店側が言うんだ?って驚き通り越して呆れた 大切にしたいのは一人の時間じゃなくて飲みに来た時間なんだよね″
Twitterより
Twitter上では、こちらの投稿に賛同する声や、この掲示物に対する批判の声が上がっていました。
これを受けて、養老乃瀧グループは、こちらの投稿のリプ欄にて、直接、お客様に謝罪しました。
投稿したお客様のDM(ダイレクトメール)にも、同じ返信があったようです。(5月23日のツイートより)
〝養老乃瀧広報担当でございます。 弊社直営一店舗にて、今回の表示がなされておりました。
養老乃瀧グループ公式Twitterより
我々の認識が甘く、皆様には大変不快な思いをさせてしまい誠に申し訳ございませんでした。
掲示物については店舗より撤去いたしました。 以後十分に注意して参ります。この度は誠に申し訳ございませんでした。″
また、養老乃瀧グループは、公式サイトでも「店内掲示物に関するお詫びとお知らせ」として、謝罪文を掲載しました。
その後、当該店舗が「一軒め酒場 川崎仲見世通り店」であったことと、問題の掲示物の写真を追記の形でアップしました。
当初は掲示物の写真はありませんでしたが、お客様からの指摘を受けて、訂正されたようです。(お客様ご本人のツイートより)
この謝罪文が、また炎上することに・・・
なぜ、謝罪文が「炎上」したのか
対応は迅速だったという印象です。
誠実に、対応をしていることも、伝わってきます。
なぜ「謝罪文」がまた炎上したのでしょうか?
謝罪文の中身を見てみましょう。
お客様からのご指摘をうけて、5月23日に、弊社、一軒め酒場川崎仲見世通り店の女性といれにおける掲示物を、お客様への配慮を欠く表現が含まれたものであったため、撤去いたしました。
出典:養老乃瀧公式サイト 2023.5.24 より
一軒め酒場は、「安いだけではなく、しっかり美味しいことで、おやじを喜ばせたい」というコンセプトのお店ですが、2023年7月に今回の川崎仲見世通り店の店舗リニューアルを行った際に、女性にも利用していただけるように、女性トイレの改装とアメニティを提供するサービスを行い、今回の表示物を掲出しておりました。
今回の表示物は男女のグループで一緒にご来店されていることを想定して掲出しておりましたが、弊社の認識の甘さや意識の欠如により、多くのお客様に不愉快な思いをさせてしまう表現となってしまいました。大変申し訳ございません。
今後は、お客様の立場や視点にたち、社会にあわせた社員の意識のアップデートをおこなうべく、外部の指導も仰ぎながら、改善に努めます。また、店内表示物の見直しを行うとともに、社内のチェック体制を強化してまいります。
この度は誠に申し訳ございませんでした。
問題点は、どこなのか。
これを受けて、SNSでの声です。
〝家父長制の家長みたいなオヤジのイメージで見てる。ジェンダーステレオタイプを押し付けたオヤジのイメージ。で、その狭いオヤジのイメージの押し付けのシワ寄せが女性にも来てる。オヤジが好きそうな料理を出すのはいいけど、客のオヤジや女性に従来のジェンダーステレオタイプを押し付けるな。″
〝敢えて意見させて頂きますが、リニューアルで使いだした「おやじ」というワードが、言ってみれば“どジェンダー”過ぎる気が正直しています。 変にコンセプトを掲げない、ニュートラルな雰囲気の方が好みです。″〝迅速に対応していただいた事には感謝致します。 男性客も女性客も同じ対価を払うのですから、片方の客に無料サービスを求めてはいけないと今後とも徹底をお願い致します。″
〝社員教育して変わるものだろうか。なんでかんでも社員のやらかしを会社全体の問題として捉える日本独特の社会構成故の考えかたなのでは。″
Twitterより
問題点をピックアップ、整理してみます。
問題点① 「男女のグループで一緒に」について
「男女のグループで一緒にご来店されていることを想定して掲出」と書かれているため、
「おやじの相手」を「してあげる」のは、やはり「女性」だと想定していることが判ります。
お店としては「女性のお客様が、全く知らない男性のお客様の相手をする、という意味ではなかったこと」を伝えたかったと想像出来ますが、
「男女グループ」であっても、ジェンダーによって、または年齢によって、「相手をしてあげる」「相手をしてもらう」であっては、良くないですよね。
それをお店の掲示物が「肯定してしまっている」ことが、問題になっています。
問題点② そもそも・・・
そもそも「おやじ」というコンセプト自体が、ジェンダーに抵触する問題ではないか、との声がありましたね。
色んな「おやじ」のお客様がいらっしゃるのに、ステレオタイプな「おやじ」のイメージを押しつけていると、問題提起も。
(謝罪文に対しての声ではなく、元の掲示物に対しての)SNSでの声を見てみます。
〝多くの女性は、 店や男性客から失礼な扱いを受けても愛想笑いを浮かべて受け流す。 男性の酔客と違って声を荒らげたり暴れたりしない。 でもそれは、素性も知らない上、酔って理性も失っているおやじに逆ギレされて暴力を振るわれないための自衛であって 喜んで接待しているのとは、断じて違う。″
〝オヤジ向け酒場ってコンセプトはアリだけど、そこで女性のホッとできる空間がトイレだけとかオヤジの接待とか金を払ってる客に対するサービスじゃない 相席居酒屋で女性無料でもあるまいし″
Twitterより
〝日頃のストレスを発散させようと、飲みに行った店でこんな物を目にしたら、一気に酔いが醒めて即店を出るかなぁ。30年以上前、会社の宴会で女性社員が男性社員にビール等を注いでまわるという図を思い出した。私はそれが嫌でスルーしてたら、上司が代わりに注いで、気が利かないなぁと言われたけどね。”
「おやじ向け」コンセプトについてはアリ、の声もありました。
女性が男性にビールを注いでまわる悪習や、女性が愛想笑いをしなければならない背景についての悲痛な声もあがっていました。
もちろん、そんな男性ばかりではありませんが、長年、多くの女性の人権が軽視されていた日本社会の在り方が、浮き彫りになった一件なのではないでしょうか。
問題点③ 「トイレ」が「ほっと一息つける空間」?
「ほっと一息くつろいで、おしゃべりやお酒・お料理を楽しむ空間」は、(トイレではなく、)客席ですよね。
いらしていただいたお客様に(もちろん、全てのジェンダーのかたに)、素敵な時間を過ごして頂くのが、飲食店で働く人が何より大切にしているものです。(筆者も、飲食業界経験者ですゆえ、解ります。)
あの掲示物も、「おやじの相手をして疲れている女性のお客様」を見かけて、発案されたものかもしれません。
思いやりを込めていたかもしれません。
発案された方ご自身も、日本社会の悪習の中で「それが当たり前」の環境として育ち、女性を傷つける可能性を持つ言葉であることに、気付かなかったのかもしれません。
今まで、気付けなかった多くの人も、今回、そのことに気づけた機会になったと思います。
会社の対応の速さについて、評価する声も。
そのような「日本社会の在り方」から出た問題ではありますが、問題点の本質とは別に、
会社の対応については評価する声がありました。
先ほどの、Twitterの意見の中にも、〝迅速に対応していただいた事には感謝致します″の意見がありましたね。
「おやじ」コンセプトについて、調べてみました
コンセプトは、「お料理について」で、「あえてのおやじ向け」だったそうです。
ターゲット層は「おやじ」、でも「もちろん、女性や若いお客様も大大大歓迎です!」とのこと。
〝つまり、価格が安いだけの「安かろう悪かろう」の店であってはダメ。「営業の三原則」にこだわりを持ち「こんなに安いのにおいしい、楽しい」店を目指しています。″
〝また店頭には「おやじが喜ぶこだわりの酒と肴だけの店」というのれんをかけました(もちろん、女性や若いお客様も大大大歓迎です!)。″〝看板には、当店イチオシのメニューを掲げています。当店の商品に対するこだわり、安いだけではないおいしさをお伝えしたい。
そう考え、大きく表示しました。私達は「安いだけじゃない価値」を提供していきます″
養老乃瀧公式note
養老乃瀧グループの、社員さんたちの熱意が伝わってきます。
●養老乃瀧公式サイト(一軒め酒場メニュー)のメニューブックをめくっていくと、お酒やお料理へのこだわりの記事もあって、楽しいです♪
筆者も、大好きな、美味しそうなメニューが並びますが…
このお料理は、男女問わず食べてみたいですよね!
まとめ
今回の問題点の整理から、改めて、社会全体の問題が表れた事象だと気付きます。
決して「一軒め酒場」さんだけの問題ではなく、このような日本社会の悪習や、「無意識のうちに」人権が軽視されている問題は、そこかしこにありますよね。
この掲示物を作成された社員さんを「怒る」のではなく
一緒に、社会の問題点を考える機会に出来れば良いですよね。
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