星野源さんの楽曲『地獄でなぜ悪い』が、2024年 年末の紅白歌合戦で歌うことが発表されました。
『地獄でなぜ悪い』は、園子温氏が監督をつとめた同タイトルの映画の主題歌になったことから、紅白ではやめた方がいいという声が多く上がっています。
なぜ、NHKはこの曲を選んだの?という声も多かったことから、本記事ではNHKが選曲した理由に着目しました。
『地獄でなぜ悪い』についてと、批判の背景について
映画「地獄でなぜ悪い Why don’t you play in hell?」について
映画「地獄でなぜ悪い Why don’t you play in hell?」は、2013年に公開された映画です。
監督は園子温(その しおん)氏です。
映画制作を夢見る若者たちが、ヤクザの抗争に巻き込まれながら、映画を作る過程を描いた、コメディ要素のあるストーリーで、星野源さんは同タイトルの主題歌を担当、橋本公次役として映画にも出演されました。
映画監督の性加害報道について
2022年、園子温氏が、自身の作品への出演を条件に 女性俳優に性的関係を迫ったことが報じられました。
その年の年末には、勇気をもって告発した俳優さんが自らの命を絶つ、という悲しいことが起きてしまいました。
その記憶はまだ新しく、多くの人々の心の傷は癒えておらず、亡くなられた俳優さんの命が戻ることはありません。
とりわけ、同じような被害に遭われた人々にとっては、「園子温氏を思い起こさせる」映画や その主題歌は、受け入れ難いものでしょう。
この映画自体は、第38回トロント国際映画祭などで ミッドナイト・マッドネス部門 観客賞など、数々の高い評価を受けているだけに、映画名や主題歌は、どうしても「園子温氏を思い起こさせ」てしまいます。
NHKの『地獄でなぜ悪い』選曲が なぜ批判されているのか
批判の真意の多くは「紅白では」別の曲を、というもの
批判は、楽曲に対する批判ではありません。
この楽曲が、星野源さんやファンにとって大切な曲であることは有名です。
そのことを知らないかたでも、「ライブで歌うな」ということは言っていません。
「紅白歌合戦」は、その番組を観る視聴者が多いこと、(このように大騒ぎになるくらい)特別な番組であるという認識が多いことから、「紅白では、別の曲を選んでほしい」という意見です。
星野さんのファンからも意見が
多くの、星野源さんのファンの方々からも、「紅白では、やめた方がいい」という意見がたくさん上がっています。
この曲は今でもずっと好きで聴くし、ライブで歌うのはいいけれど、NHKの紅白ではやめた方がいい。
彼を信じてくださいよ。
好きでも批判はするんだよ。
好きだからこそ 彼のために言う、「好き」と「批判」は両立する、これは、源さんだけではなく、どのアーティストのファンダムにもいえることだと思います!
映画を観たことがないので、星野源さんの入院中に書いた曲、という認識しかないけれど、傷つく人々がいるなら、やめた方がいい。
という意見も、ファンに限らず、多くの人から上がっています。
一方で、園子温氏の事件など、事情を知らないかたからの
年末に聴けるなんて、最高!
1番好きな曲!
という声も、当初は、少なくありませんでした。
しかしその後、そういった声も、変化していきます。
園子温氏の事件を知らなかった方々が、多くの人の声でそれを知り、他にも良い曲がたくさんあるので、他の曲にしてほしい、と、「聴くのがつらい人々」への連帯の声へと変わっていったのです。
発表時には「わぁ、楽しみ!」と思っていたファンですが、
どうか別の曲にしてください。
NHKは、なぜ『地獄でなぜ悪い』を選曲、オファーしたのか?
『地獄でなぜ悪い』を選曲し、星野源さんにオファーしたのはNHKです。
2013年にリリースした曲をなぜ今?と思うかたも多いのではないでしょうか。
当初、星野源さんご自身も、驚いたと話しています。
(参考:モデルプレス 2024.12.23 )
NHKが『地獄でなぜ悪い』を選曲した理由
NHKの紅白の今年のテーマは「あなたへの歌」です。
『地獄でなぜ悪い』は、星野源さんが入院中に作った歌で、歌詞には、源さんご自身の経験が織り込まれています。
入院生活を送っていた時の「地獄」のような状況だったり、クリエイターとしての苦悩だったり。
苦悩を描きながら、前向きに生きることも表現している歌です。
リアルタイムに流行っている曲ではないけれど、このように、ご自身の経験を基にした歌は希少であり、多くの人へ希望を届けてほしい、というNHK側の思いから、このオファーに繋がったものと思われます。
星野さんも、インタビューで このように答えています。
(星野源さん)「NHK紅白の演出の方に、今年この曲を歌って欲しいんです、この曲をテレビを観ている“あなた”の一人一人に届けて欲しいんです、と、その熱い想いと共にオファーをいただいたとき、あまりに予想外で本当に驚きました」
(引用元:モデルプレス 2024.12.23 )
そして、この楽曲『地獄でなぜ悪い』は、往年のファンも大好きで大切にしている曲でもあります。
【2024年12月26日 追記】
12月26日、NHKから、『地獄でなぜ悪い』をオファーした理由について、説明がありました。
私たち制作チームは、今回のテーマである「あなたへの歌」のもと、この楽曲に込められた思いやメッセージを、テレビをご覧になる「あなた」へお届けすることで、今さまざまな時間を過ごしている人たちを勇気づけたい、という思いから、楽曲の選定を行い、オファーしました。
なお、アーティストはもちろん、NHKも性加害は決して許さないという姿勢であることは言うまでもありません。
星野源さんのオフィシャルサイトでも、はっきり「あらゆる性加害行為を容認しません。」と表明があり、同時にNHKも 星野さん同様、「性加害は決して許さない」ことを、表明してくださっていました!
朝ドラ「虎に翼」と重なるイメージも
朝ドラ「虎に翼」の終盤で、何度も星野源さんの楽曲「地獄でなぜ悪い」を思い出していた、という視聴者がいらっしゃいました。
楽曲『地獄でなぜ悪い』には、こんな一節がありますね。
「生まれ落ちた時から居場所などないさ」
(引用元:Uta-Net )作詞作曲:星野源
「虎に翼」は、日本初の女性弁護士、裁判官となった寅子の人生を描いています。
女性が職業を持つことすら困難であった時代の、女性の人権と重なります。
「動けない場所から いつか明日を掴んで立つ」
(引用元:Uta-Net )作詞作曲:星野源
楽曲『地獄でなぜ悪い』には、社会の矛盾・不条理に対する問いが描かれています。
そして「虎に翼」でも、寅子が不条理な社会通念に疑問を持ち、声を上げる姿が描かれています。
寅子の姿に「動けない場所から いつか明日を掴んで立つ」のフレーズを思い浮かべた視聴者も少なくなかったのではないでしょうか。
そういったことから、今年の歌にふさわしい、とNHKが選曲しても不思議ではありません。
NHKの担当者には、この曲に園子温氏のイメージが無かったのではないか
これらのことから、この曲を選曲されたNHKの担当者さんは、純粋に、この曲そのものの素晴らしさが理由で選曲したものとみられ、この曲に、「園子温氏のイメージ」をいだかなかったものと推察されます。
園子温氏の事件を知らなかったファンからは、純粋に「1番好きな曲!嬉しい」「紅白で聴けるなんて」という声が上がっていたことから、担当者自身も、事件とこの曲が結びつかなかったものと思われます。
今回、多くの「性被害者たちを透明化しないで」という切実な声が上がりました。
筆者の予想ではありますが、これをかんがみて、NHKもこれから、違う曲に変えるか、もしくは 何らかのステートメントは出すのではないかと、思っています。
今回の件で「批判をしない人」に対しても、一部、Xなどで誹謗中傷する声が見られます(2024年12月24日現在)。
「正義のため」に「誹謗中傷」、矛盾するものです。誹謗中傷を見かけたら、(出来る人は)とめましょう。
今、対応協議中だと思います!待ちましょう。
最後に
(映画や楽曲に限らず、監督や俳優が事件を起こし、その度に「作品に罪はない」論争といったものが起きるのですが)
今回、「紅白で聴きたい」よりも「人権」の方を守ろうとする声が、源さんのファンの方々からも多く見られました。
それは、星野源さんが、人権を大切にする人だから、に他ならないと思います!
【12月26日 追記】紅白の曲目は『ばらばら』に変更
星野源さんが紅白歌合戦で歌う曲は、『ばらばら』に変更されました。
(参考:星野源さんオフィシャルサイト )
NHKからのオファーの理由について
源さんは、NHKからのオファーの理由について、あらためてこのように説明しています。
今回の歌唱楽曲は「アーティストの闘病経験を経て生まれた楽曲で、いま苦しい時代を生きる方々を勇気づけてほしい」という、紅白制作チームからの熱意あるオファーを受けて選定された経緯があります。
(引用元:星野源さんオフィシャルサイト )
しかし、紅白のご担当者さんの意図や、それを受けた源さんの想いから離れ、誰かを意図せず傷つけてしまうかもしれないことは、NHKの方も源さんも、もちろん望んでいません。
そして、星野源さんとスタッフさんたちは、
私たちは、あらゆる性加害行為を容認しません。
(引用元:星野源さんオフィシャルサイト )
と表明し、被害者の思いに連帯してくださっていました!
紅白では、『ばらばら』を弾き語りしてくれるそうです。
『地獄でなぜ悪い』の弾き語りバージョン、いつかどこかで聴きたいです!
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