文部科学省が、小中学校の授業時間を5分短くし「学校の裁量」を拡大する検討を始めています。
短縮した時間は、各学校で自由に使えるように次の学習指導要領に盛り込むことが想定されているのですが、それでは具体的に何が変わるのでしょうか?
すでに2年前から、時間割改変に取り組んでいる学校もあります!
授業の「5分短縮」導入で、どう変わる?
「一般的」に、授業1コマの時間は、小学校で45分、中学校50分です。それを、小中学校ともに5分短縮し、その分の時間を有効活用していこうということです。
結論としては、文科省のねらいの通り「各学校の自由」なので、各学校により、取り組みは違ってきます。
では、実際に実施している小学校のケースをもとに、どう変わるか、これをモデルケースとして見てみましょう。
授業の「5分短縮」を導入している自治体は?
すでに、「40分授業」に取り組んでいる地域はいくつかあります。
横浜市では、2022年から取り組んでいます。午前中に授業を5コマ集中して行い、午後は「スキルタイム」の時間。午後は、その日の授業で補足したいことに使ったり、子どもたちが主体的に調べたりする学びの時間です。
子どもたちの下校時間も早まりました。
こちらのポストにある時間割り表 Before → After が、大きく変わったところです↓
横浜市では、9つの小学校がモデル校として取り組みました。(参考:NHK 2022.6.10 より)
目黒区では、2002年から導入しており、約20年の実績があります。(参考:東洋経済ONLINE 2021.8.12 より)
午前中5コマ制の導入校、現場ではどうだったの?
良い影響が生まれたケース例(横浜市立つづきの丘小学校)
- 先生たちは、短い時間で内容が完遂できるよう工夫し、それによって、むしろ子どもたちが最後まで集中できるようになった。
- 結果として授業の質の向上に繋がり、先生たちの裁量度が増した。
- 保護者から「習い事へ行く前に、ゆとりが生まれた」という声が多く学校に寄せられた。
(参考:NHK 2022.6.10 より)
良い影響が生まれたケース例(目黒区中目黒小学校)
- 下校時間が30分ほど早くなり、子どもたちの遊ぶ時間が増えた。
- 教員や保護者が、個々の子どもの話を聞ける時間が増えて、十分なケアができるようになった。
- 子どもの下校時間が早まり、出来た時間を授業準備などに充て、退勤時間が早くなった教員もいた。
- (同時にICT化も進んだため)40分の授業の中でもディスカッションの時間がたっぷり確保できている。
中目黒小では「単元内自由進度学習」に取り組んでいます。
子どもが自分で学びの計画を立て、自分のペースで学習を進めていく学習法。1人でも、ペアやグループで学んでもOK。
「単元内自由進度学習」、個々の学びスタイルを活かしたシステムが、学校現場でも実現できるモデルケースとなっていますね!
(参考:東洋経済ONLINE 2021.8.12 より)
課題が見えるケース例(午前中5コマ制導入校の先生や保護者からの声)
- 子どもたちが早く下校しても、各分掌の会議・OJT研修など、会議が多く、働き方改革につながらなかった。
- 担任間の格差が大きい。
- 学校によって差がありすぎて、不満(保護者の声)
- 単に「詰め込み」に傾いてしまい、熟考してから動くようなタイプの子はついて行けない。
(参考:NHKニュースコメント欄より)
「課題」から、解決方法を考えることにつながりますよね。
・担任格差を無くすため、先生たちのための 学ぶ場を創る
・子どもたち個々の「学びスタイル」のタイプを知り、それに合わせて学校システムを考える
・学びの主体である子どもたちの意見を取り入れる
など、「課題」は改善のための、考える材料になってくれると思います。
ニュースで初めて知った教員の方々の反応
さて、今回(2024年2月)文科省がこれを発表したことで、(上記の横浜市等の取り組みを知らず)初めて耳にした教員の方々の様々な声が、SNSに寄せられていました。
「授業の在り方の変革」この取り組みを有効活用していこう
といった先生の意見が見られ、面白かったです!
下校時間を早くして、子どもたちの自由時間を増やそう
という声も多く見られます。
「時数を減らせ!」
「働き方改革」「負担軽減」「早く下校」なんて一言も書いてないぞ。
という切実な意見も。
(※上に取り上げた横浜市のモデルケースでは、下校時間は早まっています)
先生も子どもたちも幸せな学校にしていこう
「5分減ったところで、負担は変わらない」というような切実な声からは、まだまだ現場の先生が足りていなく、仕事量も膨大だ、ということが伝わってきます。
先生の働き方改革を、と言われてから幾年…やはり根本的には、日本が「教育にお金をかけない」という問題があります。ひとりの先生が負担する労働が多いという問題は、教育の公的予算が圧倒的に少ないことにも起因します。
教員が負担なく働けるシステムを作るのは、喫緊の課題だと思います。
そして、今回の文科省の「授業時間短縮」の方針は、ただの「短縮」ではなく、「学校の裁量を拡大する」ということにこそ、重要な意味があると思っています。
横浜市・目黒区のケースでは、先生たちの裁量度が増し、授業の質の向上に繋がりました。
「授業時間」というだけではなく、教育の「自由度」であり、これから、例えば個々に合った教育・教員の負担を減らす取り組みなど、子どもたちと先生にとって幸せな学校になるような取り組みへの「自由度」を、皆で議論していくことに繋げたいと思います。
コメント
コメント一覧 (2件)
子どもたちは喜んでいるでしょうね。
リムリムさん、コメントありがとうございます!
ホント、子どもたちには嬉しいですよね。