埼玉県に突如 巻き起こった「とんでもない条例案」を巡る問題。とりわけ子育て中の親御さんたちを困惑させていました。
連日、埼玉にとどまらず 全国的に炎上していましたが、本日10月10日、自民党県議団は取り下げを決めました!
県内の子どもに関わる行政に携わる人、そして親たちは、ひとまずホッとしたところです。
「小学3年生以下の子どものみで外出・留守番させることを禁じる」という、この埼玉県‶虐待″禁止条例の改正案をめぐる動き、そして問題点をまとめてみました。
問題の埼玉県「条例案」をめぐる経緯
事の始まりは、県議会最大会派の自民が、2024年施行を目指し、小学校3年生以下の子供の‶放置″を禁止する、県‶虐待″禁止条例の改正案を提出します。
県議会福祉保健医療委員会で、6日に自民と公明党の委員の賛成で可決されてしまうという事態になり、13日には本会議で採決の予定、というところまで来ていました。
【問題の「改正案」】
小学3年以下の子供に対して、保護者が「短時間でも子供に留守番させる」「子供同士で公園で遊ばせる」「子供にお使いを頼む」「子供だけで登下校させる」などの‶行為″をした場合、‶虐待″と認定される。
さらに、県民にはこういった行為を目撃した際、‶通報″を義務づける。
小学4年~6年生の児童についても、自宅などに放置しないようにすることを「努力義務」とする。
罰則は設けないとしながらも、埼玉県の自民党県議団 田村琢実団長は6日に、将来的に罰則を設ける可能性について「今後子どもを放置するような状況がたくさん出てくるようなことがあれば、再考する必要がある」と述べていた。
これには、県民にとどまらず、日本全国からあらゆる反対の声が上がります。
そして本日、10月10日午後2時過ぎに、取り下げの発表がありました。
各方面から「条例案」への反対の声・問題点まとめ
埼玉県内在住の市民からの反対意見はもちろんのこと、連日各メディアのニュースでも取り上げられ、日本全国で議論を呼んでいました。
この「条例案」に関して、埼玉県内の行政はもちろん、他の自治体からも、反対の声が上がっていました。
本日「取り下げ」にこぎつけるまでの、各方面からの声をまとめました。
埼玉県各首長・市町村の幹部「即刻、取り下げるべきだ」
この条例案に関しては、「即刻、取り下げるべき」と県内の首長や市町村の幹部から、怒りや困惑の声が上がっていました。
【さいたま市の幹部】
市町村へ対応を義務づけるなら、関連する要項、規則、財源がセットで明示されないと現場が混乱する。
関係者の意見聴取も行っていない中で、今の改正案では現実的な取り組みの方向性が見いだせない。
【県東部の市幹部】
学童指導員の大幅な増加や、外で遊ばせるときの見守り、保育時間も延長させる必要があり、そのための人員配置も必要になる。
財政負担はばかにならない。
【県内のある首長】
「我々市町村がどれだけ困るか分かっていない」
【県内のある首長】
対応が難しい条例。
特に一人親家庭ではこの条例が守れない家庭も多いと思う。
(引用元:毎日新聞 2023.10.9より)
埼玉弁護士会「憲法違反のおそれも」
竪十萌子弁護士(埼玉弁護士会所属)
「極めて問題の多い改正案。『放置』の定義が過度に広範であいまいだ。子供の人格権も含め、憲法に抵触する恐れすらある」
竪十萌子弁護士は、子供の虐待や離婚問題に取り組んできた専門家です。
(引用元:毎日新聞 2023.10.9より)
さいたま市PTA協議会から反対意見の意見書が提出
さいたま市PTA協議会も、オンライン署名を集め、田村団長に直接面会して意見書提出、埼玉県知事室に意見書提出、と、迅速に動きました。
さいたま市PTA協議会の坂下三浩理事が、知事室訪問し、大野知事に直接、反対の意見書を手渡しました。
(テレ朝ニュース 2023.10.10 より)
さいたま市PTA協議会は、「今回の条例案」には反対だが、一方で、子どもや保護者が安心して暮らせる社会創りは、みんなでやっていきましょう、とも呼びかけています。
さいたま市PTA協議会としては、まず、保護者や、子どもたちの声を聞いてもらうことができたと安堵しております。オンライン署名にご協力いただいたみなさま。市内・県内を問わず、全国のみなさまに、応援をいただいたこと、本当に感謝申し上げます。
これからも、子どもや保護者が安心して暮らせる社会を作るために、議員のみなさまとも積極的な意見交換をするなどしていきたいと思います。また、実際に子どもが放置されることによる事件・事故は絶えず、緊急に取り組むべき課題として、社会全体で取り組むために協力していきたいと思います。
本改正案が取り下げられたからこそ、私たちPTAは、本当の虐待が起きてしまわないよう、家庭・学校・地域での取り組みを強化して、本当に子どもたちのために、保護者のためになる活動をしていかなければならないと考えています。
これを機会に、社会全体で子どもを守り、虐待を無くしましょう!
さいたま市PTA協議会 「埼玉県虐待禁止条例改正案の成立断念報道について」
公明党の埼玉県議会でも、再度話し合い
公明党内からも、条例案を巡る懸念の声が上がります。市民からの声も反映され、県議団でも再度話し合いが行われていました。
「身内」の自民党国会議員からも反対の声
自民党の国会議員の方々からも、反対の声が上がりました。(泉房穂さんからのポスト お借りします。)
もちろん県議からも、反対の声が上がっていました。
ある自民県議は、改正案は「行き過ぎで無理がある」と批判。もし可決・施行されれば、「県内各地で児童‶虐待″とされる事態が続出する」とし、「日本一暮らしにくい埼玉になる」と懸念を示しています。
(参考:産経新聞 2023.10.5より)
【全国から反対の声】長谷川ういこさん
れいわ新選組参議院政策委員、そして小4と小1のお子さんのママさんでもある長谷川ういこさん。
このような「子育て罰条例」を作ることではなく、賃金の引き上げや親の家庭内労働へのサポートの充実、子どもを見守る環境をつくっていくことであると訴えます。
【全国から反対の声】泉房穂さん
今年2023年4月まで長年 明石市長をつとめた泉房穂さんも、連日、この問題について発信しており、市民・マスメディア・大野埼玉県知事へも、呼びかけていました。
「取り下げ」発表の後、「声を上げていくことの大切さ」に言及されています。
まとめ
取り下げられたことで、ひとまずはホッと胸をなでおろしていますが、やはりこのような「トンデモ条例案」が生まれ、一度は委員会を通過してしまったことは確かです。今後も注視していきたいですね。
今回の「取り下げ」も、条例案を考えた県議団が、子どもたち本人の実際の生活を学んだり、行政や親たちの意見から学んだりして納得したうえでの「取り下げ」ではありませんでした。
埼玉県の自民党県議団 田村琢実団長は記者会見で、取り下げの理由について「私の説明不足」と述べ、「議案の内容等については、私は瑕疵(かし)がなかったというふうに感じている」とはっきり述べています。
6日のテレ朝NEWSでは、記者さんからの質問「Q.僕も親が共働きで、家で留守番していた、という状況があったのですけれども、それも虐待にあたるということでしょうか?」に対し、田村団長は「もちろん、そう考えています」と答えていました。
これは、目の前にいる記者さんのことも、さらに記者さんの親御さんのことまで 傷つけてしまうような団長の発言に驚き、悲しくなりました。
今回は、非現実的な、親子に対する極端な「罰」を強いて、監視し合う社会にしていこうという動きが、現実に起こってしまった恐ろしさと、そして、市民の声が政治を動かした、という嬉しさ・実感と、両方が貴重な経験でありました。
もちろん子どもたちのことは守っていくべきですが、決してお互いを「監視・通報」という社会などではなく、お互いに支援し合う社会を創っていきたいと改めて認識させられます。のびのびと子どもたちが「安全に」冒険できる社会創りへ。
「子どもの安心・安全を守る」という理念から、かえって逆行して暴走している団長さんたちには、本来の、子どもたちだけの冒険や自律を見守る子育ての楽しさを伝えたい。
田村団長の好きな「クレヨンしんちゃん」は、まさにそんな世界観なのでは…と思うのです。
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